9月1日に日系祭の前夜祭で日系センターの壁画にライブペインティングをするということで意気込みをぜひ事前にお聞きしたいなとTakaさんに取材をオファーしました。
彼が壁画を描いたというダウンタウンにあるベントールセンターの「Looks Great Gallery」にお邪魔しています。
ーこんにちは、お話を伺えるのをとても楽しみにしてきました。
実はお互いにPortlandで接点があったんですね。
そうですね。ポートランドにあるコンパウンドギャラリーでKaoさんとタイミングは違ったけど僕もそこでやらせてもらって。バンクーバーのアーティストが展覧するんだよとKaoさんのことをオーナーさんに聞いていたんです。
ー懐かしい!もう10年以上前の話ですね。(苦笑)
私は街中でTakaさんの絵があちこちにあるので親近感があったんですよねー。笑
プライベートな世間話にすぐずれちゃうんで先にインタビューを。笑。何年にカナダに来たのですか?
最初に来たのは2002年です。冬だけ来ていてフリースタイルスキーというのをやっていました。大学卒業してすぐにこっちに来て移民したのは2007年になります。
ー以前はウイスラーに住んでいましたよね?
フリースタイルスキーをやっていたのでやはりその関係でウィスラーに居付いていました。
ー大学はアート系ですか?
大学はアートとは関係ないことをしていて…
ー何を専攻していましたか?
法学部だったんですけど、それとは別に通信で映画制作の学校に行っていました。インディペンデントで企画をたてて予算やスケジュールを組み、どのように映画を作るかの基礎を学んだんです。絵コンテを描いて一つの作品に仕上げていくというのは、アートで食べていくというのに役立っていると思います。
ー映画制作から絵に移行したのは?
元々絵を描くのが好きだったんです。
映画作るっていうのはインディーであっても大掛かりじゃないですか。でも「絵」って短編のストーリーをキャンバスに押し込められるでしょう。スキーをしながら絵を描いていたら、友人に「発表したらいいじゃん」と言われて、ウイスラーにフリーペーパーのオフィスがあったのでそこに持っていたんです。そしたらすぐ表紙に採用されて。笑
ーその時も今のようなスタイルですか?
その頃(2003年)はまだイラスト風で思いついたものを描いていました。
ー洋服やスノボ、スケートボードに絵を描いていますよね?
友人が一緒にやろうよって声をかけてくれたので、アパレルショップを始めたんです。スノボ用の帽子やTシャツなどのイラストを手掛けていました。その頃はまだ自分のアートをメインにというよりブランドメインでした。ストリート系のアーティストとの交流の中、本気でアートと向き合っている人たちと触れ合うことで自分ももっとやってみたい、何かしらのストーリーを絵に込めたいという気持ちが強くなってアート活動につながっていったんです。
ー自分のアートと商業美術との違いや難しさについて。
上手な人は見積もり出す時に先にデポジットをもらったりするんですけど、僕、それすぐ忘れちゃって、スケジュール組んで制作に入ったところで話がポシャっちゃったりすると持ち出しですよね。苦笑
なので今でもストラグルしていますよ。僕たちって個人事業主みたいなものじゃないですか。笑
ーですよね。笑。自分で仕事の話をとってきて、材料を買って、作品作って、展覧会を計画して売り込みしての繰り返しですものね。笑
Takaさんはビールやワインのラベル、レストランの壁や屋外のテーブルに絵を描いたりもしていますね。
パティオのテーブルの絵は市のプロジェクトだったと思います。コロナの時に市がパティオを一斉に作ったじゃないですか。
コロナの時がきっかけになったんですが、自分の中で何かが変わったなと思ったんです。それまではアートに自分の思いを100%落とし込んでいたんですが、クライアントの意見を取り入れて自分のエゴを消すっていう行為は、うまく説明できないのですが、それはそれでいいなって思ったんです。
ーそういえばコロナの時はお店が窓ガラスを割られないように板を張っていた時にMUJIロブソンのウッドパネルに壁画を描いていましたね。ロブソン通りのフラッグもタカさんの絵がはためいていて、コロナの最中でもずいぶん忙しそうだなって思っていました。
コロナの時は集団でやることが制限されて会社に行くこともできず、クリエイティブなことをやる人が増えたと思います。行政や人々のアートサポートも結構あったのでアート活動に支障はなかったですね。コロナ明けの方が厳しいですよ。苦笑

ーアート展の傍、2016年の“Vancouver Mural Festival” にも参加しているのですね。2021年、キツラノの壁画を描いていましたよね。
あれもVancouver Mural Festivalのコミッションワークで話をもらったんです。
ー炎天下の中、真っ黒に日焼けして大きなクレーンの上でビルの壁画を一人で描いているのを見て驚きました。カッコイイなあ、って思って大手を振って声かけちゃったんですよね。あの時も笑顔で神対応ありがとうございました。笑。アシスタントは使わないんですか?
アシスタントを使ってもいいんですが、結局一人ですね。でもキツラノの壁画はサーフェスがボコボコだったのとブリックでペイントを吸い込んでしまうのに苦戦しました。何度もコーティングをするのに手間取って大変でした。その工程を人に頼めばよかったです。結局一人で頑張っちゃって。笑
ー絵のお仕事、壁画の仕事などはどのようにしてつなげていくのかお聞かせください。
初めは売り込みに行ったりもしましたが、絵を発表し続けていくうちに話が舞い込むようになりました。こんなのがあるよって誰かが声をかけてくれたり、メールでアート系列のお知らせが来るので申し込んだりします。今でも行政が出している公募とかに応募しますよ。
ー日系センターの壁画の話はどのように来たのでしょうか?
ありがたいことに日系センターのKaraからお話をいただきました。
ー壁画の絵を手がける時のスケッチや作業時間はどのぐらいかかりますか?
プロジェクトにもよりますが最初のスケッチをだいたい1-2 週間くらいで作ります。その後修正等しながら最終のスケッチを決定させていきます。最終のスケッチが完成するまで合計で平均2週間から1ヶ月くらいですが、プロジェクトによっては2-3ヶ月かそれ以上かかることもあります。
ー構想を練るのはどういう時?
常にアイデアは考え続けているような状態ですが、技法やスタイルなど何か新しいことを試している時はそれがうまくいってもいかなくても新しいアイデアに繋がることが多いです。
どうしても煮詰まったら自転車に乗ったりランニングしたり体を動かしに行きます。時間の取れる時なら冬はスキーしに行ったり夏はサーフィンしに行ったり。プロジェクトの合間に好きなことでおもいっきり体動かしているとリセットできていいアイデアが出てくることが多いです。
ー日系センターの壁画は、何を思って描いた絵ですか?
日本の伝統的なモチーフを西洋的モダンスタイルと融合させてみたいと思いました。日本とカナダのカルチャーのコラボレーション、伝統的な文化とモダンカルチャーの共存が壁画の上で表現できたらいいなと思っています。
ーアーティストとして生きていく心構え、難しい点など教えて下さい。
安定しないのが難しいですね。けれど安定を求めたらアートとして面白くない。
リスクを負って面白いことをする。アーティストとしてデカい壁に挑むってチャレンジのし甲斐もあるし、収入がなくてもやる価値があると思っています。
ビジネスセンスを持つのも大事だし、痛い目を見て学ぶ覚悟が必要。
全然夢がない話をしてますよね、僕。笑
ーいや、すごいためになりますよ!私の教えているアート学校の生徒たちは「将来、アーティストになるんだ~」ってお花畑にいるような子ばかりですから現実を知った方がいいです。笑
今日は貴重なお時間ありがとうございました!
Takaさん、ストリート系の「かっこよアート」でちょっと近寄りがたいかな~って昔は思ったりしていたのですが、笑顔がお茶目でとっても気さく、話しやすいです。
本気でアートと向き合っているTakaさんにも「なんとな~く」絵を描いていたという最初というものがあって、アートと自分の葛藤など、普段はあまりできないアートの話がいっぱいできて楽しかったです。
日系祭りに行けなかった人も、日系センターを訪れる際には壁画をぜひ見て下さい!
バンクーバーのダウンタウンにあるベントールセンターの 「Looks Great Gallery」にてTaka さんの壁画と絵の展示(無料)もしていますので、そちらもぜひチェックしてみて下さい。

Web site: www.takasudo.com
[文:Sleepless Kao]