Meets:翻訳・通訳ガーリック康子さん

 康子さんに初めてお会いしたのは5年前、病院で自身の手術工程を聞かされる面談ででした。

自分では英語が聞き取れるから通訳の方はいらないと思っていたのですが、病院側が気を利かせて手配してくれていました。病名や部位などは聞き慣れない単語も多く、身体を切り刻むとなるとやっぱり不安になるもので言葉のわかる方が横にいるという安心感は本当に感謝でした。

ー病院で通訳していただいた時に名刺をいただけなかったので取材が今になってしまいました(笑)

 病院の仕事の時は自分の宣伝はできないんです(笑)

 あの通訳のシステムはPLS(プロビンシャルランゲージサービス)が無料で提供するサービスで、ケアカードを持ってる方なら誰でも使えます。カナダ全土にあるサービスではないのですが、BC州は移民が他の州に比べて多いからあるサービスなんだと思います。ただあまり宣伝はしていないのでご存知ない方も多いと思います。この機会にぜひ知っていただきたいです。

 病院で予約をする際に尋ねてください。

ー色々とされてますがノ本業は?

 翻訳・通訳です。

通訳のほうは、聞き馴染みがないと思うんですけどコミュニティー通訳と言うものを主に生業にしています。

ーコミュニティー通訳とはどんなものですか?

 範囲が割と広いんですが、例えば病院やクリニックに行く・交通事故に遭って専門の先生に診断してもらう・裁判に行く前の情報開示と言う手続きなど、普段の生活に即した通訳のことを言います

ー私が病院で康子さんにお世話になった時の仕事もですか?

 そうです。

ー翻訳・通訳の仕事に就こうと思ったのはいつ頃ですか?

 学校の英語が特に好きだったわけではなくて、中学生の時に洋楽を好きになって歌詞に興味を持つようになったのがきっかけです。歌詞集を買って、そこから英語を勉強するようになったという感じです。職業にしようとは全く思っていませんでした。

ーちなみに曲は?

 Queen (クイーン)です(笑)

 大学では社会福祉を専攻しました。在学中に翻訳の仕事がしたいと思い始めて、大学卒業後、英語の勉強のためにイギリスに2年半住み、日本に戻ってテクニカルライターの仕事を3年しました。これは改めて日本語の書き方を学ぶためでもあったんです。その後カナダのビクトリアにワーホリで来て、政府が出す観光用のガイドブックや観光雑誌の翻訳、たまに頼まれて通訳の仕事などをしていました。

  その後、ビクトリアからタイに移り、日本で知り合ったカナダ人の夫と子供達と一緒にタイに10年ほど住んでいたんですが、2004年の冬にバンクーバーに引っ越してきました。

 40代半ばになって通訳の勉強を本格的にしようと、VCC(バンクーバー・コミュニティー・カレッジ)の法廷通訳養成コースで夜間1年間勉強しました。途中までは、医療通訳養成コースとカリキュラムが同じなので、医療用語の単語テストもありました。ラテン系の言語と違って私は母国語が日本語なので、知らないものはゼロから学ばなければいけない。10代や20代もいる同級生たちの吸収力に負けないように、かなり頑張りました。

ー通訳で大変な事ってありますか?

 通訳は翻訳と違って瞬時に訳さなければなりません。翻訳は締め切りはあるものの、考える時間があるので気になる言葉はとことん突き詰められるんです。

 気になる言葉があるとこだわってしまうという翻訳の癖が抜けず、初めの頃は先生によく指摘されました。通訳している時に次の言葉を聞き漏らしてしまうわけにはいきませんから。

ー翻訳と通訳とどちらの方が得意とかありますか?

 翻訳から入っていますが、どっちも好きですね。翻訳はひとりで考え続ける仕事なので、煮詰まるんです。人にも会いませんし。(笑)

ーボランティアも活動的にしてらっしゃいますよね

 はい、2017年に 「日本語認知症サポート協会」という非営利法人を共同設立しました。知らないから恐れるってありますよね?知恵をつけて備えるようにと認知症に対する正しい知識を広める活動をしています。*主な活動内容は認知症カフェ『オレンジカフェ』で、毎月ゲストをお招きし、テーマに沿ったお話をしていただきます。その他に、セミナー等も行っています。認知症映画の鑑賞会なども行いました。この協会の活動も3年経ち、少し安定してきました。大学で社会福祉を勉強したもののソーシャルワーカーにはならなかったのですが、思えばそれが今やってる仕事やボランティアに繋がっている気もします。

ー本を出される企画とかありますか?

 バンクーバー新報で、「認知症と二人三脚」というエッセーを連載中です。これをまとめて本にすることは考えていますね。

ー私は絵本を書いているのですが、個人的にも翻訳の仕事を頼むことはできますか? 

 もちろんです!フリーランスなので(笑)

文学の翻訳もやりたいですね。情緒や行間を読む必要があったりと難しい分野ですが、とても興味があります。

ー料金制度は?

 翻訳は、「ひと文字」いくら、「一語」いくらという感じです。ページ数が多いとバルクでチャージもあります。ですので翻訳の場合は時間給で考えると割に合わない時もあります(笑)。通訳の場合は、時間単位になります。

ー康子さんに連絡したいときは?

 「ダイアルバンクーバー」でも探せますが、名前が変わっているのでググると連絡先が出てくると思います(笑)。

ー今後の活動は?

 ボランティア活動とのバランスを保ちながら、本職(翻訳・通訳)にさらに力を入れたいですね(笑)。

*認知症カフェは、認知症の方やそのご家族、介護・医療の専門職、地域の方など誰でも気軽に参加でき、安心して過ごせる集いの場所です。

[文と写真:Sleepless Kao