Meets: 横地 徹さん Old Faithful Shop勤務 デザイナー

 ガスタウンのColdova通りにある「Old Faithful Shop」

店を覗いてみると奥の壁一面にヨーロッパの規格サイズの額が飾られていて、気になって入ってみた。

お店のインテリアはシンプルで、置いてある物ひとつひとつが厳選された質の良いものであることがうかがえる。

アジア人のスタッフがいたので声をかけてみると日本人であった。

—日本人のスタッフがいるとほっとしますね、どのような経緯でこのお店で働くようになったのでしょうか?

 大学留学ですね。小さい頃から物作りや絵を描くのが好きで、美大に行きたかったんです。武蔵美か海外留学か、と考えてグーグルでリサーチしてたらバンクーバーのエミリーカーがヒットしたんです。

 日本の高校を卒業後、エミリーカーに即行きたかったんですが、エミリーカーは学生寮がないので初めから一人暮らしはきついかなと思ってブリティッシュコロンビアのNorthern Lightsカレッジに留学しました。そこでは留学生は僕一人で結構大変でした (笑)。一年終わらせたところでエミリーカーに編入しようと受験したんですけど落ちてしまって(笑)

 日本に帰って、バイトしながらポートフォリオ作りをしたんです。その間2年、今思えば自分を見つめるいい時間でもあったんですが、周りが就職していく中、焦りがありましたね。エミリーカーに受かってまたバンクーバーに戻ってきました。

—デザイン関係の仕事でやっていこうと思ったのはずっとですか?

母親がグラフィックデザインをやっていて、祖父のデザイン事務所を手伝っていたんです。

—環境が整っていたんですね

 はい、そういう環境にいたと思います。家にアトリエがあったりするんですが、そういうのも子供の頃はごく当たり前のことで…

 曽祖父はインダストリアルデザイナーで『スポークチェア』とかデザインした「豊口克平」という人です。

 ウェブサイトで『スポークチェア』を検索すると私でも知っている有名な椅子でした。「豊口克平」さんは武蔵野美術大学教授として教鞭をとったりと日本の工業デザイン界の重鎮でありました。すごい人のお孫さんに声をかけたのだなと思っていると…

—すごいじゃないですか!

 実は僕、曽祖父がそんな有名だというのはこっちの大学に来て勉強しているうちに知ったんです。

 高校までは周りの友達にクリエイティブな人がいなかったのでそういう話にならなかったんです。だから大学で初めて(祖父に関しても)知ることが多くて。大学では勉強をすごいした気がします。自ら進んで勉強に励みましたね。

 こっちに来て学校とか仕事場でルームメートもフランス人だったりとヨーロッパの人と接する機会がいっぱいあって、視野がとても広がったんです。それまではアメリカはかっこいいなって思ってたんですが、カナダの人もヨーロッパの人も結構日本好きじゃないですか?こっちにきて逆に日本てかっこいいんだなと考えるようになりました。

—エミリーカーではどのような勉強を?

 最初はコミュニケーションデザイン、次の年に平面よりも立体が楽しいなと思ってインダストリアルデザインに移行しました。6単位あって、コアなクラスで大きなプロジェクトを進めていくんです。環境とかの知識を深めるクラスやプロトタイプを製作したり、技術を勉強するクラスなどがあります。

3年の夏に「Old Faithful Shop」でバイトをしたのがきっかけで、今はPGWPを利用してフルタイムで働いています。後2年はバンクーバーにいられます。チャンスがあればヨーロッパに行ってもっとデザインの仕事をしたいと思っています。

—店頭に立ってない時は何をしているんでしょうか?

 お店の裏で在庫管理をしたりしています。あと木工室があって、店舗備品を製作したりしてます。プラントスタンドや家具を作ろうと試作品を作ってるところです。「Old Faithful Shop」ブランドのキャンドルも裏で作ってます。

—将来は?

 最終的には日本に帰って自分の国の文化を手助けするようなデザイナーになりたいですね。

 日用品て人々の生活にすごく近くて文化を築いていると思うんです。例えば、サランラップは便利だけどみんなが使うと環境に悪いじゃないですか?便利だけど悪い影響も及ぼしている。それにとってかわるような物があれば…身近なもので社会に良い影響を与えられるものを生み出せたら良いなと思っています。

 ヨーロッパ、日本で自分の地位を確立したらバンクーバーでもエスタブリッシュしたいなと思ってます。カナダはカーシェア、バイクシェアなど新しいものを取り入れて他の国より柔軟性があるのは歴史がまだ浅いから伸び代があると思うんです。

—休日は何をしてますか?

 休日は本を読んだりビーチ行ってビールを飲んだりカナディアンライフを満喫してます。

スノボ、スケートボードやDJなんかもしてます。「NEIGHBOUR」(洋服店)のウェブサイトのモデルもしてます。

—いろいろやってますね。今後の活躍が楽しみですね〜。

 将来、横地くんがデザインした日用品を何気に使っている日が来るかもしれません。毎日店頭には立っていないようですが、「Old Faithful Shop」で見かけたらに日本語で応対してくれますよ(笑)

「NEIGHBOUR」のウェブサイトではインタビューした時とはまた違う雰囲気の横地くんが見られます。チェックしてみてください。

Website: https://www.tetsuyokochi.com

[文と写真:Sleepless Kao