Meets: 寿海千鶴さん 民泊JUGEMUオーナー

 バンクーバーで会った千鶴さんこと「チーちゃん」に会ったのはかれこれ15年前、和歌山県の色川で民泊を始めるとは思いもしませんでした。以前「MEETS」でも取材したソルトスプリングアイランドのカイさんや共通の知人が何人もいたことが発覚して(世界は狭いなぁ)と思うばかり。日本一時期国のついでに「チーちゃん」を訪ね、取材させてもらいました。

ー(名前の漢字を見て)寿の海に千羽鶴ですか、なんともおめでたい名前ですね(笑)

バンクーバーに最初に行ったきっかけは?

 19歳の時にワーホリで。寿司屋で働いていて、「マジックランプ」を作るのを手伝ったりもしていた。

ーまさかの先月号で取材した「マジックランプ」、あちこちで繋がる。

 バンクーバーにメンター的な人がいて「タイはいいよ~」って言われたのでタイに行ったらいいところで、タイの人と結婚し8年暮らしてた。

ータイ語が話せる?

 タイ語、話せるよー(笑)最初はバンコクにある伊勢丹のお花屋さんで働いてたんだけど、混んでるとこが苦手で…

 トランという町が南の方に移り、そこでタイのラーメン屋さんをやったの。ラーメンと言ってもフォーみたいな。「クイッティオ」っていうんだけど。

ー聞いたことないな~。これから流行るかもね、タピオカみたいに(笑)

 その後、再びバンクーバーに戻って観光ビザで延長して1年ぐらい滞在した。

ーその時に私が「クレッグスリスト」で使わなくなった画材を売り出してたのを買いに私の家まで来てくれたんだよね。今でも絵を描いている?

 今はあまり描いてないかな。描こう描こうって思っているんだけど田舎暮らしは結構やることが多くて。あの時代が一番描いてたかな。冬の間に時間がちょっとできるからその時描こうとは思ってる。

 カナダに戻って移民の手続きをしようかなって思ったりもしたんだけど、なんか手続きがめんどくさくなっちゃったんだよね(笑)

日本に戻って色川で農家民泊っていうカテゴリーの簡易宿泊所を経営してる。

ーすごいのどかな場所ですけど…バスもない?

 バスは1日3本、勝浦から来るよ。Amazonも来るよ(笑)でもプライム会員でも今日中には届かない(笑)

クロネコヤマトは朝晩来るよ。

ーああ、じゃあ都会じゃないですか(笑)

お客さんは何を求めて色川に来るんだろう?

 お客さんのほとんどは外国の人が泊まりに来るのだけど。熊野古道を求めて寄る感じかな?

東京、京都、大阪を飽きてる人が探求するために来るっていうのもある。

2月に「大文化祭」っていう面白いお祭りもあってそれは楽しいよ(笑)

売りは、有機無農薬で作った食材でご飯を作る。ご飯炊きはかまどで炊くのを体験できて、2泊とか泊まったら農業も体験できます。

冬は農閑期で何もないけど、里芋さつまいも、ニンニク、かぶ大根、小松菜、ほうれん草、ゴボウなどが採れる。

ー不便なことってありますか?

 不便なことはないかな。タイに住んでるとこも不便だったから。WiFiもあるし、逆に都会にいた時よりもインターナショナルで面白い人たちと繋がれる。

 アーティスト、ミュージシャン、大学教授や脳科学者も来たよ。”日本の学会に来たついでに寄った”って言ってたけど、「ついで」というにはここは遠い(笑)

 マダガスカルの近くのレユニオンて言うとこから来た人もいたよ。

 カナダから帰ってきて転々と居場所を探していて、色川に来て「やっと見つかった~」と思える場所に出会って落ちつきました。

ーここにきて何年ですか?

 7年目です。

ーチーちゃんに「遊びに来て」って言われて軽く「行くよ~」って言ったけど何せ遠い(笑)

 そうなの、東京から一番遠いんだって、新幹線もないし。

ーだからこれだけの自然が保持できてるんだね。

 チーちゃんはまた移動するのかな?

 わかんないなー。農家民泊する時に政府から助成金が出たので10年はここにいる予定です。

ー民泊の名前の由来は?

 寿海(じゅかい)という名前と、落語の「じゅげむ」から来ていて、たくさん幸せなことばが入っていて良いものがいっぱい詰まってるんです。

 ゆっくりと穏やかに話す「チーちゃん」は色川で生まれた住人のようにこの土地に馴染んでいます。朝ごはんにナンプラー入れたタイ風お粥を用意してくれていて、川のせせらぎと鳥のさえずりがずっと聴こえていて元気をもらえるパワースポット、ちょっと東京から遠いですが、行く価値のある素敵な場所です。

予約はウェブサイトからirokawamura.com

 

[文と写真:Sleepless Kao