前日に鈴木洋平監督と今村左悶プロデューサーにお話を伺い、そこで「終わった後に色々考えてしまう作品です」という話があった。
観終わった後の感想は、まさにその通りで、終わった後不思議な余韻を感じた 。
作品は、主人公・鉄男の詩的なナレーションから始まり、とある家族の生活のお話と思いきや、そこに不思議な球体が登場し、主人公やその他の人々を静止させてしまう 。実際に何が起こったのか誰もわからない状況に対し、記者・出口が真相解明に乗り出す。丸を見た事によって静止した人々と、その状況に動揺し、怒り、悩み苦しむ周りの人々の迫力ある演技とのコントラストは見どころである。
丸というアブストラクトな概念と、現実的なストーリーが共存し、それが時に平行して、時にはからまりあって作品が進んで行く。話の流れを想定する事は出来ない。「想定外を想定」して観るべき作品である。
クライマックスで は、丸を見た事によって静止状態であった鉄男の怒りがあらわになる。そして出口と向き合う決闘のシーンはリアルで迫力に溢れている。息をのむ迫力に、映画『丸』を見ている我々が静止してしまう瞬間である。
上映後の質疑応答で、次回作についての質問があり、納豆の発祥の地、水戸市でのゾンビ映画の制作について明らかにした。次はどんな鈴木ワールドを見せてくれるかが楽しみである。