国連で取り上げられているカナダの人権問題

第二次大戦後の国際的な人権擁護の活動の中で、カナダは1948年に国連総会で採択された「世界人権宣言」の作成に指導的な役割を果たすなど人権擁護にかんして大きな役割を演じたことで知られている。

 第二次大戦後の国際的な人権擁護の活動の中で、カナダは1948年に国連総会で採択された「世界人権宣言」の作成に指導的な役割を果たすなど人権擁護にかんして大きな役割を演じたことで知られている。しかし、その当時、日系人の移動と収容の政策が継続していたことに象徴されるように、未解決の人権問題があったし、現在に到るまで、カナダはさまざまな未解決の問題を抱えていて、それへの取り組みが不十分であることも知られている。

 最近、7月7日、8日の2日間、国連の「公民権・政治的権利委員会」でカナダの人権問題に関する会合が催された。この委員会は加盟各国の人権問題について各国の政府代表を招いて検討し、勧告することになっている。10年に一度行われるこのカナダの人権にかんする検討の会合でどのような問題が取り上げられたのだろうか。

 そこでは、最近、カナダの活動家の間にある集会結社の自由に関する憂慮が話題になった。すなわち、国連はカナダのテロリズム対策のための法律、C-51に関心を寄せている。さらに、たとえば、カナダの鉱山会社が外国で活動する場合には国連の人権のかんする規約が適用されないとカナダ政府が理解していて、鉱山会社が人権侵害を犯さないことに期待しているという生ぬるい方針であることも明らかになっている。

先住民の地位や権利

 なんと言っても、年来の懸案事項は先住民の地位や権利にかんする多岐にわたる問題であろう。今回の国連の会合で検討の対象となったのは以下のような問題領域である。

  1. 先住民の女性の殺害や行方不明、
  2. 環境問題に関連する法案作成に関して先住民の意見が反映されていないこと、
  3. 「公民権・政治的権利委員会」の規約がカナダに適用されるべき法的効力がないとカナダ政府が理解していること、
  4. カナダの刑務所の受刑者のなかで先住民の比率が非常に高いこと、
  5. 先住民の貧困や食料の不足、
  6. 先住諸民族の権利に関する国連決議が拘束力を持たないというカナダ政府の見解、
  7. カナダ政府による先住民との「話し合い」(consultation)とは何かがはっきりしないこと、
  8. 福祉の対象となる子供に中で先住民の子供の比率が異常に高いこと, 
  9. 先住民の言語が消滅の危機にあること、
  10. 最近発表された寄宿学校問題に関する「真実と和解委員会」(TRC)の報告に対するカナダ政府の公式の対応が表明されていないこと、さらに、
  11. 「公民権・政治的権利委員会」の質問にたいする回答作成に際して先住民の全国組織(AFN)が相談を受けていないと思われること、などである。

 こうした問題を含む国連の委員会による勧告書が近く作成される予定である。その勧告に対してカナダ政府は真摯に取り組んでいくであろうか。現政権の下では、人権は優先事項からは程遠いと見える。国連の勧告には法的拘束力はない。しかし、国際的な専門家による助言、   勧 告をないがしろにすれば、カナダにがおける人権擁護の妨げとなるだろう。さらに、カナダが今後、人権問題に関して諸外国に対する模範となるかどうかも問われることになる。今後の動向に注目したいと思う。

私たち人権委員会の取り組み

 私たち人権委員会はさまざまな人権に関連する問題の中で、この文章の冒頭で触れた「反テロリズム法(C-51)」を取り上げて、検討するシンポジウムを催したいと計画している。今春、この法案が上程された時、私たちは強制移動と収容の経験を想起した。私たち日系人にはその教訓を生かすことを率先して行う責務があると言えよう。たとえば先住民の伝来の土地や権利の保護に関する抗議活動に対する取締りなど市民の基本的権利の侵害がこの反テロリズム法によって容易になることが懸念されているのである。この問題を検討する際に、私たちは過去の経験を想起しながら認識を深めたいと思っている。

 この問題を含めて私たちの活動に関して、ご希望やご意見があれば、当委員会までお知らせいただきたい。 

参考資料:

Alex Neve, “A sobering look at Canada’s human-rights record,” Glove and Mail, July 10, 2015.

Kerry Coast, “ UN Human Rights Committee questions Indigenous crisis in Canada— July 7th and 8th in Geneva, Canada’s not in compliance with the Covenant on Civil and Political Rights,” Vancouver Media Co-op, July 9, 2015.

講演会のお知らせ

今年はアジア太平洋戦争終結の70周年にあたります。そのため、当地の有志が実行委員会を形成し、記念の催し(講演と討論)を計画しています。

テーマ:和解をめざして−アジア太平洋地域における第二次大戦の終結70周年を記念して

講師:高嶋伸欣氏、琉球大学名誉教授

日時:2015年10月17日{土曜日)午後2時—5時

場所:バンクーバー・ユニタリアン教会

   (949 West 49th Ave., Vancouver)

高嶋伸欣(たかしま・のぶよし)氏は高校教諭の時代に40年間にわたりマレーシアやシンガポールなどへの研修旅行を企画・実施。その地域の歴史や日本占領下{1941年—45年}の住民の戦争体験などを調査・研究しています。平和と和解に関する同地域の人びととの協力や相互理解について講演して頂きます。講演は日本語、通訳付き。

この催しについての問い合わせ先:van70th@gmail.com

[文・鹿毛達雄]