日本で<専業主夫>をめぐる大論争 やはり<男のプライド>が難関 (その2)

日本では今でも、女房に稼がせて家事を担当する<主夫>に対する風当たりはかなり強く、世間、とりわけ男性は一般的に違和感を抱いている。また主夫の妻達はデザイナーなど平均的サラリーマンの3倍近く稼ぐ女性が多いかたわら、<できる女性>ほど世間的に<できる男性>を好んでしまうそうだ。

 日本では今でも、女房に稼がせて家事を担当する<主夫>に対する風当たりはかなり強く、世間、とりわけ男性は一般的に違和感を抱いている。また主夫の妻達はデザイナーなど平均的サラリーマンの3倍近く稼ぐ女性が多いかたわら、<できる女性>ほど世間的に<できる男性>を好んでしまうそうだ。「えー、それって養ってほしいっていうこと?男が働かないというと、なんでこんなに腹が立つんだろう」と<できる女性>のひとり。

 主夫になった男性にとり一番難しいのはプライドを捨てることだ。「プライドは一文にもならないからね」というのは、難病のため会社を辞めて8歳年下のデザイナーの妻の扶養に入った49歳の男性。3歳の息子の育児と家事も引き受けているが、<悟りの境地>に入るまでは、近所のスーパーに買い物に行くときも必ずスーツを着て行ったそうだ。知り合いに偶然会っても「仕事の途中で寄りましたっていう顔ができるでしょう?〔笑〕」

 80年代シンガポールの英字紙に勤めていた頃、4スター、5スター級のホテルでフロント係りを務める日本人女性達が「日本人ビジネスマンの客が世界最悪」とグチっていたのを思い出す。英語のできる同邦人とわかるや否や「キミ、何々して!」と命令する。周りの欧米人ビジネスマンたちが怪訝な顔をする程だった。身分階級を問わず今までずっと<世話(即ちサービス)される側だった男性たちがそうヤスヤスとギブアップするはずがない。

 ちなみに日本で専門家があげる<主夫に向く男性の条件>は、

  • テーブルの上のものが落ちかけたら、先に手を出す
  • 無駄なプライドを捨てるのが上手
  • 家にいるのが好き
  • 女性でもすごい人は素直にすごいと思えるし応援できる

だそうだ。

 セクハラ問題や未婚青年男女の増加など、昨今カナダでも日本でも<男女関係>が極めてデリケートになっている。日本とカナダの違うところをあげるとすれば、集団社会の日本では、主夫問題にしても<一つの正解>をもとめたがるのに対し、西洋・>カナダは個人主義だから、隣の旦那さんが主夫だろうが(当方のように)自営業だろうが会社員だろうが、余りこだわらないのでは。それにもし顔を合わせても、会社や家事・育児以外に話題はいくらでもあるし。

 老いぼれたが当方も男性だから、若いウェートレスや女性店員に親切にされればもちろん嬉しい。でも分かれ目は彼女たちにつっけんどんにされたと感じた場合だろう。「まあ今時の女の子はこの程度だろう」と受け流すか、「あれ、ジジイが嫌なのかな」とか「この頃の躾けはナッテナイ!」などとこだわるか、の違いだろう。<悟りの境地>に近づこうとはしているが、相手が東洋系だったりするとつい「この子にはまだ敬老の精神が生きているのかなぁ」 などと期待してしまうこともある。

 当然日本人同士と分かり、すぐ飲み物を持ってきてくれる等日本語でサービスしてくれると嬉しくなる。そのくらいは<同郷の好(よしみ)>として許されるのではないか。独断と偏見にまかせて記したこの一文、日系カナダ人や在住邦人の読者の皆さん、特に女性に「ちょっと違うんじゃない?」と思われる部分もあるかもしれないが、悪しからず。

[文・渡辺正樹]