働きing
第一回 :通円悠花さん
はじめにお話を訊くのは、通円悠花(つうえん ゆか)さん。
「えん=縁」、ここから人の輪が広がっていったらいいなぁとトップバッターに抜擢しました。

YUKAさんは、通円というお名前、ご出身が京都で平安時代から850年以上続いている老舗のお茶屋さんなんですね、どうりで珍しいお名前だと…。
そうなんです。実家の屋号が「通圓(つうえん)」で個人名は「通円」です。広辞苑にも載ってるんですよ。
名前が辞典に載っているってすごいですね。
うちの家族だけがこの苗字なんです。カナダに来て苗字を英語で書くとTSUENとなるので、日本人に思われないことが多いですね。
旦那さんは日系の方ですよね?
そうです。主人の名字は「森=モリ」で100年ほど前、和歌山から来られた日系ファミリーです。
バンクーバーでお茶の事業を始めたきっかけはやはりお家の家業を継ぐ為ですか?
いえ、実家は弟が継いでいますのでそんな気はなかったです。
20年ほど前カナダに留学中「おいしいお茶 飲みたいな。でもおいしいお茶 ないなぁ。うちのお茶 飲ませてあげたいなぁ」とそんな感じから何となく、2003年に会社を立ち上げました。宇治茶をバンクーバーのお茶屋さんや日本食レストランに卸し、今では通圓のインターナショナル部門は、ここバンクーバーで承っています。
バンクーバーのお茶ビジネスで感じた事ってなんですか?
そうですね、10年前にはTea Shopのオーナーでも日本茶、緑茶を知らない人が多かったのですが、今では抹茶ラテはどこのカフェにもありますよね。それだけ日本のお茶というものが浸透してきています。
つい最近、通圓のお茶を卸している日本食レストランさんで、自家製の抹茶ティラミスやほうじ茶マカロンが好評ときいてうれしく思っています。日本茶ってこんなにおいしかったのか、とバンクーバーの人にも言ってもらえるとあー、よかったなぁと思います。
ある日系のイベントでお茶を淹れて出していましたよね? お若いのに着物をパシッと着こなしていてかっこいいなぁ、と。着物の柄が大正モダンなかんじで素敵でした。着物は日本で買われますか?
着物は日本から持って来ています。あの時の着物は祖母のものなんです。紫の地色に白の立わく柄、昭和初期の頃のやと思います。イベントの時に祖母の着物を着ていると 守ってもろてるような気になって心強いんです。
実家での子供の頃の記憶でね、うちの店にふろしき包みを持った呉服屋さんが来はるんです。「まぁお上がりやすぅ」と店の中に通して、家の奥の間の畳の上に呉服屋さんがぱぁ~ぱぁ~っといくつもの反物を川の様に広げはるんです。それをおばあちゃんとひいおばあちゃんが見ていって「ほなぁ、これとこれとこれもろときます。」と注文するんです。
わぁ、そういう光景、実際に見てみたいですね。
そうすると、その呉服屋さんが、畳の上に広げた反物をくるくるくるっと両手で巻いていかはるんですよぉ、それを子どもの頃見るのが楽しみでねぇ~。いまだに記憶に鮮やかです。
映画『細雪』は四姉妹ですが、うちは四世代同居な女系家族で、昔は従業員も女の人ばかり。私は十歳までは商家のひとり娘として育ちました。弟ができてほんま良かったです。できてへんかったら、今頃 私はバンクーバーにはいいひんかったと思います(笑)
女系家族。聞いているだけで貫禄ありますね。しきたりとか厳しそう…。私がYUKAさんのご実家に行ったら緊張してしまうかも…。YUKAさんは娘さんが2人おられますよね?娘さん達は歴史あるご実家に帰郷する時はどんな感じですか?
娘達は単においしい茶だんご、抹茶アイスと宇治金時がただで食べ放題♪とただただ楽しんでるだけです。(笑)
バンクーバーで子供を育てるところの難しさってありますか?
子育ては難しいけど、とても楽しんでいますよ。うちの娘達は今8歳と6歳です。小学校では英語なので、日本語教育もがんばっています。夫は日系カナダ人ですが日本語はあまりできません。BC州の田舎街で育ったのと時代も今とは違い、日本語に触れることも少なかったようですね。幸いバンクーバーには 日本語、日本文化、日本食に触れることが多く、日本語も教えられるし、ダディと話す時は英語、私とは日本語というか京都弁で、って感じです。「あんなぁ~、今日ダディはんがなぁ~」とか「すぐきとお茶漬け食べたいわぁ」というようにしゃべるのでおもしろいですよ(笑)
バンクーバーに住んでいて良いところは?
自由にのびのび暮らせるってことでしょうかね。宇治では「通圓」という名前を背負っているので、私は「通圓さんとこのむすめはん」という責任や諸々ありますが、バンクーバーでは私の事はYUKAとして見てくれるし、とても自由を感じます。
今、興味のあるものを訊かせてください。
やっぱり食べ歩きが一番楽しいかもしれません。移民してすぐ某日本食レストランで働き始め、同僚やお客さんとグルメ情報を交換し、実際に足を運んでいます。日々忙しく、まだ行けていない店がたくさんあって困っています(笑)
まだまだ訊きたい事だらけですが、書くスペースが(汗)
YUKAさん家の850年の歴史を語るには1ページでは収まりませんし「読者の皆様、通圓のお茶について詳しくはWebで! 」でいかがでしょうか(笑)
あ、どうぞ ご覧くださいませ。(笑)
素朴なYUKAさんは2人の娘さんのお母さんであり、日本食レストランでも働き、事業も起こした働きingでした。次回もお楽しみに☆
宇治茶の老舗・通圓