5月 会長からのメッセージ

「ここで集合写真を写しましょう」と、フォルス・クリークを行進するデモ参加者に呼び声がかかりました。私達が後ろを振り向くと太陽が眩しくて目を細めました。そして、他の参加者達が追いつくまで立ち止まりました。私は、第一回「人権と自由の行進」の主催者、ドン・チャップマンさんとのお喋りに夢中になっていたところでした。

私はそれまでドンさんとEメールをやりとりし、バンクーバーで自由と人権の行進を行いたいという彼のアイディアについて話し合ってきましたが、今回が初対面でした。私は、マーティン・ルーサー・キング牧師の公民権運動の精神、情熱、発想 を取り入れ、カナダの事情に適した内容の1年に一度のこの行進で グレーター・バンクーバー日系市民協会を代表できて嬉しく思いました。

ドンさんは、米国におけるマーティン・ルーサー・キング牧師の行進に感銘を受けました。今年は折しも、キング牧師の公民権を求める大行進から50周年を迎え、4月17日はカナダ人権自由憲章が制定されて33年を迎えました。

私達がディビッド・ラム公園に到着すると、式典が行われていました。第二次世界大戦時、米国初のアフリカ系アメリカ人空軍パイロットだった人のスピーチもありました。そのディック・トリバー大佐は、キング牧師とコレッタ・スコット・キング夫人の感動的な思い出を話しました。

式典の後で私は、トリバー兄弟のディビッドとディックと出会い、お互いの家族に関して話し合いました。私は、自分が四世のカナダ人で ブリティッシュ・コロンビア人だと話しました。母方の兄弟達は、1880年代に日本から米国に船で到着しました。その兄弟のうち二人がカナダに向かい、 バンクーバー島のカンバーランドに定住しました。父方の家族は1906年に水安丸という船でカナダに到着し、バンクーバーの及川島とアナシス島に落ち着きました。

公園を去る時間になりました。二人はバスに乗り、私はフォルス・クリーク沿いをオリンピック村に向かって歩いて戻りました。長い間歩きながら色々思いを巡らせました。私達は今でも夢を持っています。でも、人権擁護活動はまだ終わっていません。私達の肌の色は、私達への待遇、社会経済的地位、雇用の機会や、そして私達が監視・身柄拘束の対象になるか決める要因です。

私は子供の時に、クーティニー地方のネルソン近くにあるスローカンという小さな町に住んでいた祖父母を訪ねたことを覚えています。他の日系人の家族と同様で、私の家族も誰一人として収容所のことを話しませんでした。大人になってからカナダ政府の人種差別について学び、その時なぜ祖父母があれほど辺鄙な場所に住んでたかを理解しました。

カナダ政府はバンクーバー島に住んでた祖父母から全財産を没収し、まず最初にヘィスティング公園、続いてBC州内陸地方の収容所に入れました。戦後5年たち日系カナダ人は西海岸に戻ることが許可されました。政府の役人は祖父に日本に「帰る」よう言いましたが、祖父は、自分はカナダ生まれで、ここが故郷なのだからどこにも行かないと答えました。そしてどこにも行きませんでした。

残念ながら、祖父は補償が決まる前に亡くなりました。祖父の名誉回復は行われず、カナダ政府が祖父や2万2千人のカナダ市民に行った間違いを認める謝罪を受ける機会はありませんでした。

私達はこの国で苦しい道のりを歩んだ日系人の先人達に感謝します。彼らは苦労し、耐え続け、成功し、やっと家や仕事、コミュニティを手に入れた矢先に打ちのめされました。辛抱し、一から出直し、こうして私達のコミュニティの存続を守ってくれました。私達はそんな先人達の歴史と声が失われないように意志を受け継ぎ、単に保存するのでなく、人々に知らせなければなりません。私達の誰一人として過去を知らなければ、間違いが繰り返され、私達は苦しむことになります。

収容所に暮らした人々の数が減りつつある中、自分達の家族の過去や収容体験について知らない人達が増えてきています。

私達の日系カナダ人のコミュニティは、数世代にまたがる多民族の背景を持つ日系カナダ人、新移住者、 若い世代のリーダー達、そして尊敬すべきシニア世代と多彩です。誰でも参加できますし、一緒に活動しながら日系コミュニティを盛り上げていくことができます。ところで、現在、学生の人、学生を知っている人にお知らせがあります。今月末から夏季学生2名を雇用することになりました。本誌の13ページをご覧ください。

日系コミュニティへの一番簡単な支援は、グレーター・バンクーバー日系カナダ市民協会の会員になること、もしくは会員の更新、そして他の人達に申し込みを薦めることです。学生とシニアには特別会費を設けています。また、この素晴らしい機関紙『The Bulletin/ げっぽう』の支援もできます。会員は電子メールもしくは郵便で受け取ることができます。『The Bulletin/ げっぽう』は、日系カナダ人の歴史を学び、記憶にとどめ 、そして私達のコミュニティの今と昔の出来事を祝うフォーラムです。
歴史に関してですが、次号の『げっぽう』1942年のヘィスティング公園における日系カナダ人に関する歴史が記述表示された標識の除幕式に関する思いを書きます。除幕式はこの号が発行される頃に行われます。

それから、多くの皆さんと日系コミュニティのイベントでお会いしたいと願っています。まずは6月14日の第3回 の隣組とJCCA共催の ゴルフ大会でお会いできると思います。日系コミュニティとの結びつきを深めるため多くのイベントに参加し、他のコミュニティとも提携することで、相互理解が深められますし、私達のコミュニティに注目してもらえると私は思っています。 

[文・ロレーン・オイカワ 訳・齋藤雅子]