『Ow(丸)』がベスト・ニューディレクター賞にノミネート

Ow (丸)を出品した鈴木洋平監督はこの度バンクーバー国際映画祭のベスト・ニューディレクター・アワードにノミネートされた。10月2日に賞の受賞者発表が行われ、残念ながら受賞はフランスのAxelle Ropert監督とフィリピンのMikhail Red監督に奪われたが、この日の前日に国際プレミアを終えたばかりの鈴木洋平監督と、音楽プロデューサーの今村左悶さんにお話を伺った。

『Ow』 (丸)を出品した鈴木洋平監督はこの度バンクーバー国際映画祭のベスト・ニューディレクター・アワードにノミネートされた。この賞は出品作品が処女作、あるいは2作目の海外から参加の監督に与えられる。この賞は今年から始まったもので、過去20年間の「Dragons & Tigers Awards for Young Cinema」で若手監督の作品に対し賞を贈り、監督として成長していく基盤を支えていた背景から新しく設置された。

10月2日に賞の受賞者発表が行われ、残念ながら受賞はフランスのAxelle Ropert監督とフィリピンのMikhail Red監督に奪われたが、この日の前日に国際プレミアを終えたばかりの鈴木洋平監督と、プロデューサーの今村左悶さんにお話を伺った。

(左:鈴木洋平監督、右:今村左悶プロデューサー)
(左:鈴木洋平監督、右:今村左悶プロデューサー)

―――昨日国際プレミアを終えてのご感想は?

鈴木洋平:あるシーンで皆が、Owってなっていて、「やったー」とおもいました。
今村左悶:あんなにリアクションがあるとは思わなかった。映画を見ながらあるショックシーンでお客さんが「あぁ」って声を本当に上げていて、それは東京ではあまりない。

―――今回バンクーバー国際映画祭に出品する事になったきっかけは?

鈴木:(Dragons & Tigersプログラムキュレーターの)トニー・レインズさんからお話が来ました。連絡が来た時は、大喜びでした。

―――お2人はどうやってつながったんですか?

鈴木:共通の知り合いがいて、そこからです。
今村:この映画を作る為の助成金制度が受かった時に、一緒にやろう、と話が進みました。
鈴木:それで、やろうぜと言われて、やってやってもいいかな、と(笑)

―――お2人で作品を作ったのは今回が初めてですか?
鈴木:そうです。
今村:でも2012年に撮影が終わってから新しい企画を作り始めています。

鈴木:20個あります。
今村:そのうちの一つをこれから水戸市で作り始めるということがバンクーバーに来る直前に形になりました。
鈴木:ゾンビ映画です。

―――先ほどの写真撮影では、肩に手を回して!というカメラマンのリクエストが来た時に、「そんな仲良くないんだけどなー」と言っていましたが、実際のところはどうなんですか?

鈴木:自分なりのジョークです。
鈴木&今村:(爆笑)
今村:抱き合って寝てるんで。
鈴木:それはー、ちょっと違った意味に誤解されるから。
今村:そうかー。

―――今後海外に進出して行きたいと言うお気持ちはありますか?

鈴木:出て行きたいというよりも、日本の感じ、ってあると思うんです。この感覚は日本人にしかない、っていうのがあると思うんです。視覚的にも、神経的な意味でも、あるいは社会的な意味でも。そういったものでも、日本人にとっても違和感があるものがあるから、そういうものをただやって、でもそこで共通な部分を見つけて楽しんでくれるように。
今村:今回バンクーバーに来て、結構歩き回って、良い街だと思ったので、バンクーバーでも映画撮れたらな、と思った。それに当たっての協力者を探しています(笑)

―――影響を受けた映画作品や監督はありますか?
鈴木:クラシックな映画の表現に影響を受けます。必ず意識してしまうのはエルンスト・ルビッチ。無駄な事をいっさいしていない感じがして。この映画に関してはヴェルナー・ヘルツォークの『My Son, My Son, What Have Ye Done』(邦題:狂気の行方)と言う作品を観て、それにインスパイアされました。関係ないものをいかに結びつけてそこに何かを見いだすか、という姿勢がどちらにもあります。

―――明日もう一度スクリーニングがありますが、これから映画を観られる方に一言お願いします。

鈴木:ぜひ終わった後に観た感想を言いに来て欲しいです。明日は会場にいるので、ぜひ終わった後に話に来て下さい。あとは、僕たちと映画を一緒に撮ってもいいよ、サポートしてもいいよ、と言う人がいたらぜひ!

Ow (丸)
10月3日(金)
10時〜
The Cinematheque
詳細:viff.org

平凡な一軒家で発生した父子心中未遂事件。父親のみが銃で自殺し、現場にいた次男・鉄男とその恋人・百合子は、その事件以来、文字通り時間が静止してしまう。記者・出口は独自に調査を進めるうち、不条理極まりない世界へ迷い込む…。それを見ると時間が止まり、世界が歪む。不穏な丸の正体は、観る者の解釈そのもの。

さながら『2001年宇宙の旅』のモノリスのように、鈴木家の空間に突如として現れた球体。しかしもたらしたものは叡智ではなく、静止。父の死と次男の静止によって、それなりに平穏無事だった鈴木家の日常が変化し、真相を追う男をも変えてしまう。クライマックスで対峙する鉄男と出口の殺し合いは、身体の静止者と思考の停止者の、互いの全存在を懸けての闘いに他ならない! ともすれば空気さえも読む私たちを…丸は試してくる。(作品公式フェイスブックページより