編集後記 2019年8月

KAO (a.k.a. Sleepless Kao)

 日本から帰ってきて時差ボケもままならぬ、、お昼近くに電話で起こされ携帯をオンにすると電話の向こうから開口一番「かおちゃん、断らないでね、お願があります 」電話をかけてきた主はいつも懇意にしてもらっているアーティスト/デザイナーのテリーササキさん。

 週末に彼のファッションショーが『Visual Space Gallery』で行われる事はなんとなく知っていたのですが、キャンプに行く約束を友人としていたので、(う〜ん、この二択は難しい…)

 しかし半世紀も過ぎた歳でこんなオファーが来る事自体あり得ないし、テリーさんから頼みごとをされるなんて滅多にないのでお受けしました。

 結果、本当に楽しい経験をさせていただきました。楽屋でヘアメイクさんに綺麗にしてもらって素敵な洋服を着てランウエイを歩く。なんか気分がいい。

Terry Sasakiさんのファッションショーにて

 目標は高いヒールを履いても転ばぬ事(皆さん、覚えておいででしょうか。以前に編集後記で膝の靭帯を3分割した事を書きました。普通に歩けますがグラグラ感は否めず) とりあえず目標は達成したので自分としては合格点です(激甘です。笑)

 子どもたち相手にアート学校でのサマーキャンプの授業、コンピューターの家庭教師、本誌の仕事とノンストップでこなす中、夏は遊びの行事も多く、野外コンサート、花火、キャンプ、、、そして26年欠かさず参加しているパウエル祭があり、今月は日系祭りもありますね!

(先出のテリー佐々木さんの洋服はパウエル祭や日系祭りでもブースが出ているので興味のある方は買うことができます)

 学校では夏風邪が流行っているので、子どもたちから移らないように手洗い、そして鼻の中までうがい(笑)最善を尽くして遊びに備えます。

 健康であるからこそ仕事も遊びもできるので、皆さんも病気や怪我に気をつけて楽しいカナダの夏をお過ごし下さいね。

Kazuho Yamamoto

ニュースなどでご存知の通り、現在、オッペンハイマー公園にはテントがたくさん張られており、100名以上*1のホームレスの人々が公園での生活をしている。この状況に対しパウエル祭を約1ヶ月に控えた7月4日、パウエル祭協会はオッペンハイマー公園の利用について声明を発表した。プレスリリースでは日系カナダ人が「パウエル街」と呼ばれていた地域からの強制移動をさせられた1942年を例に挙げ、理事のエドワード・タカヤナギ氏が「強制的な立ち退きを歴史的に経験したコミュニティとして、パウエル祭協会はこの歴史を繰り返すことに対して反対の姿勢 を示し、この地域に住む社会的弱者に立ち退きをさせるようなことはしない」と発表した。

 生活をしていた家、土地、財産の全てを政府から奪われ、戦後一からの再スタートをせざるを得なかった日系カナダ人コミュニティー。強制収容の経験者、その家族、新移民の人々が集まって日系カナダ人の100周年を祝う目的でパウエル祭は始まり、今年で43年を迎える。毎年国内外からのゲストパフォーマーに加え、バンクーバーのコミュニティー団体・パフォーマーが多く参加し、日系カナダ人コミュニティー、そのサポーター達が一度に集まる年に一回の大きなお祭りである。

 普段ダウンタウン・イーストサイド地区を訪れない人々にとって安全面の不安などあるかもしれないが、パウエル祭では毎年セキュリティーのチームが組まれ、地区に住むベテランボランティアも多く参加し、毎年イベントの成功に大きく貢献していることをもっと知って欲しい。その様子はグレッグ・マスダが製作したドキュメンタリー『Spirit of Nihonmachi』から見ることができるので、機会があればぜひ見て欲しい。

 パウエル祭に出席することは、ただ単にイベントを楽しむという目的だけではなく、それ以上の意味がある。パウエル祭に出席するということは、先住民の人々とその土地に対して敬意を示し、かつて日系カナダ人が生活した地域とその歴史を再確認し、差別や偏見社会に対して反対の姿勢を示し、文化を伝承していくことの重要さを日系カナダ人コミュニティーを超えて発信するという意味があると思う。

*1: CBC News 「A day in the life at Vancouver’s Oppenheimer Park homeless camp」より。7月19日