働きing:峰岸伸輔

版画家 峰岸伸輔さん
版画家 峰岸伸輔さん
版画家 峰岸伸輔さん

版画家 峰岸伸輔さん

 バンクーバー在住の版画家、峰岸伸輔さんが日本で個展をやるというので、六本木にあるストライプハウスギャラリーに行ってきました。

その名の通りストライプの模様のビルのギャラリーに入ると峰岸さんが出迎えて「順路はこっちからね」とIKEAばりに観る方向を指示されます(笑)

 「拓く(ひらく)」というタイトルの展覧会、

未知の分野でも積極的に挑んでいける心の強さを持ち、未来を自分で切り開く(拓く)ことの出来る人。困難にぶつかっても、それを乗り越えていく力。大地や夢・希望そして形のない生気を表現していました。たとえそれがこの世でなく、次の世界であっても。

 この階のシリーズのタイトルは「生生・ショウジョウ」と言って仏教用語なのだけど、万物すべてのものには生と死があって永久的に繰り返される、ということをイメージして創った作品集です。右回りで見て行ってください、と言い残し来客のため席を外したので忙しい峰岸伸輔さんに代わり、お母様がいらしたのでお話をお聞きしました。

峯岸さんの作品

峯岸さんの作品

–峰岸さんが絵を描き始めたきっかけはいつだったのですか?

 伸輔が幼稚園の時、五六歳だったかしらね。私が第二詩集を出してね。その時にあの子が描いた素描を詩集の表紙にしました。そこから二人三脚が始まったのよ。

 峰岸さんが接客から戻ってきたので、

—子供の頃から絵描きになろうと思っていたんでしょうか?

 そうでもない。絵はずっとうまかったんだけどね(笑)幼稚園の時に、田中正秋さんというシルクスクリーンで有名な作家さんのアトリエが幼稚園の真横にあって、親に送り込まれたのね。小学校に上がるとまた別の先生のアトリエに行って、基本的にペインティングの勉強をした。先生に絵が上手いってことでコンクールに絵を送ってもらって、入選とか何回もして、日本ジュニアで賞ももらった事がある。だから絵には自信があったんだよね。中学校からは野球部とか運動で忙しかったから、アトリエ通いは無くなった。中学、高校は美術の時間で絵を描く以外、特別なことはしなかった。成績はよかったけどね(笑)

 伸輔は授業中に女子の裸の絵を描いててすごく上手かったよ。(友人1)

 そうそう、芸術的なやつが授業中に回ってきた(笑)(友人2)

 中学の時は、野球部のやつらの写生大会の絵を描いて、五〇〇円ずつもらったりもしてたよ。

 高校の時は理系。基本、勉強嫌いだったな。受験に失敗して浪人もしたけど、パチンコしかしてなかったかな(笑) 成長するにつれ、自分は理系じゃないなと思いはじめた。やっぱりアートが好きだから、デザインを勉強するのであれば親も納得してくれるかなと思い、カルフォルニアのコミュニティーカレッジに留学しました。日本の大学には行きたくなかったので…。

 コミュニティーカレッジの美術史の先生がとても情熱的で、自分はデザインじゃなくてやっぱ絵(ファインアート)が好きだなって芸術に目覚めた感じ。じゃあ芸術でやっていくにはどうしたらいいか… 当時でもアメリカの芸大の学費は高額過ぎて、編入を半分諦め掛けていました。そんな折、北米中の美術大学の紹介をする「ポートフォリオ・デー」というイベントで、バンクーバーにあるエミリー・カー美術大学を知ったんです。 で、バンクーバーに引越した。

 初めは旅行ビザで入国したので夜学しか取れず、その時初めて取ったクラスがエッチングだった。その時の先生がとても良くてね、版画をやっていくようになったと…。

—峰岸さんはエミリー・カーで先生をしていますよね。

 最初は生涯学習の先生になり、その後に非常勤で本科生を教え始め、今では常勤でスタジオ・テクニシャンの仕事もしています。自分の作品の制作も大学でしているので、版画科の工房に常にいます。

—私も(元エミリー・カーがあった)グランビルアイランドで峰岸さんとすれ違っても挨拶するぐらいで、いつも忙しそうにしてましたね。

 学期によっては週七で大学に入ってる。自分のアート制作もしてるからほぼ寝てないよ。

—え、どうやって生きてるんですか

 わかんない。運動かな。病気をしないようにいつもスポーツはしてます。

 体力をつけるためにテニス、野球、カーリング、スカッシュ、ゴルフなどで汗をかいて、ストレス発散。

—体力があったら寝なくても大丈夫?(笑)

 そうだね(笑)とにかくストレスを溜めない!

—いつも忙しくしている峰岸さんにバンクーバーでゆっくり会うというのはほぼ不可能ですよね(笑)どのくらいの頻度で個展をやっているのでしょうか?

 北米は二年おきくらいにやっているかな。オカナガンのヴァーノン市とバーナビー市では美術館で開催。夏に大学が休みだからその時に合わせて、東京で一年に一回のペースで 個展をやっています。一昨年は京都で、過去に横浜でも二、三回やっています。

—とても意欲的ですね。

 そうね、描きたい事がたくさんあるんですよ。描いてると次に何を描こう、何をしようってアイデアが次々に浮かんでくるんです。

—すごいですね。この忙しいアート生活がいつまで続くんでしょうか。

 リタイアがない仕事なんで、一生やってると思いますよ(笑)

 ユーモアに長けた軽快な話しぶりの峰岸さんは人懐っこく、彼の創り出す作品とは印象がまた違います。

 寝ていないという割に(笑)彼の絵に対するエネルギーは大きくて、これからもたくさんの作品を世に送り出していくのでしょう。

 アーティストであり、エミリー・カー芸術大学で先生をしている峰岸さん、とてもかっこいい生き方だなと思いました。

www.shinartist.com

峯岸さんとKao

峯岸さんとKao

[文:Sleepless Kao