働きing:米盛哲史

米盛哲史さん

 今回はGrapes & SodaでバーマネージャーをしているSatoshiさんにお話をお伺いしました。

—バンクーバーに来た経緯を教えてください。

  高2の時に英語を勉強するために2週間のサマープログラムに参加したのが切掛けです。夏のバンクーバーは楽しくて、こんな綺麗な街に住みたいなって思ったんです。高校卒業後、10ヶ月間の語学留学を経て2004年からバンクーバーに住み始めました。

—バーテンダーはずっとなりたいと思ってたのでしょうか?

 今考えてみると少しは有ったと思います。でも当時の自分の英語力では到底無理だと思ってました。レストラン経営の方に興味があったのでダグラスカレッジのホテル&レストランマネージメントの2年のコースを取りました。在学中はどうにかしてバンクーバーに残りたい、仕事を見つけなければと思案していました。学校を終了した後、友達の紹介でFeenie’sというビストロで ディッシュウッシャーの職を得ました。せっかくキッチンで働くことに成ったのだからと、自分のシフトの2時間前に入ってプレップを教えてもらいました。料理の基礎を教えてもらいつつ1年ほど働いた後、GastownのBonetaというフレンチビストロに移ります。厳しいフレンチカナディアンシェフのもと、そこで5年間働くことに成るのですが、雑用係から始まってスーシェフまでいきました。

ーそれはすごいですね!

  Bonetaを辞めた後、同じ系列店のSave-On-Meetsでオープニングスタッフとしてブッチャーの仕事を始めました。

—それはまた今のバーテンダーの仕事からは想像つかないですね。

 ずっと精肉を勉強してみたいなって当時思っていて。Nose to Tailって言葉が有るんですけど。豚一頭骨から皮まで無駄無く使う為に色々試行錯誤してパテ、テリーヌ、ソーセージを作るという8時から5時まで働く日々を1年続けました。で、夜暇だなぁって思ったんです。

 バンクーバーに来て8年ほど経っていて、英語のコミュニケーションにも自信がついてた頃だったので、ちょっと新しいことをやってみようかなってGastownにある”The Diamond”というバーでメインのバーテンダーのサポートをするBAR BACKの仕事を週末だけ精肉の仕事を終えてからするようになりました。

—昼も働いての夜の仕事はきつくはなかったですか?

 きつかったです(笑)、でもそれよりも当時やっていることが、きっと将来に繋がるってゆう漠然とした確証のない確信が有りました。The Diamondでの仕事は楽しかったですね。

今まで、こっちで言うBack of the houseの仕事しかしてこなかったのでFront of the houseの仕事はとても新鮮でした。当時The Diamondでは毎回違うGuest Bartenderの方と働く機会があってめちゃくちゃ勉強に成りました。

そのころバーテンダーとして本格的に仕事がしたい!と思うようになり、精肉の仕事も辞めてフルタイムでバーの仕事を始めました。間もなくして、運良くWildebeest のオープニングスタッフで正式にバーテンダーとして働くようになります。

 バンクーバー9年目ぐらい、30歳になるのを前にして、別のシーンを見てみたいっていうのとビーチでバーテンダーみたいなのもいいかなって(笑)オーストラリア、シドニーにギリホリで行ったんです。結局ビーチで働くことは無かったんですけど、シドニーはバンクーバーとは全く違うBar sceneが有ってものすごく良い刺激になりました。飲まれているカクテルも全然違うなーって。自分のスタンダードの幅がぐっと広がったと思います。

 シドニーでのワーホリを終え、日本に戻って1年近くバーテンダーとして働きましたが、バンクーバーに戻ってまたバーで働きたいなってずっと思っていました。これまた運良く(笑)Farmer’s Apprentice RestaurantオーナーのDavidが京都の実家に遊びにきたとき、自然派ワインバー(Natural wine bar)、Grapes & Soda を作るプロジェクトを聞かされバーマネージャーの仕事を受けるためにバンクーバーに戻ってきました。

—バンクーバーに戻って来て今の職場はどうですか?

 この仕事を受けて本当に良かったと思っています.バーテンダーとしてだけじゃなく、経営者としての勉強も日々出来るのですごく良い経験をさせてもらっていると思います。今までは誰かのレシピ、メニューをうまく作るという形だったのですが、今働いているGrapes & Sodaでは自由にやらせてもらえています。メニューも自分の責任で変えていけるのでチャレンジングで遣り甲斐が有ります。

—カクテルを作るにあたっての解釈や思い入れはありますか?

 僕のカクテル作りは料理の延長線で、味のバランス、食感、風味すべて料理と共通していると思います。よく野菜などもカクテルの素材として使ったりもしますし、良い意味でweirdな素材を使って「これ変わってるけど、めっちゃうまい!」って言ってもらえたら嬉しいですね。 最終的には美味しければ良い、美味しくないとダメやと思うんです。

—お客さんの要望をカクテルにするのって難しそうですね。

 基本は強め、フルーティ、スッキリ、よく飲むスピリッツなどを聞いて作ります。

「私っぽいの、お願い」って言ってくる人いるんですが、僕、占い師じゃないので、好みを聞きたいです。「○○が好き、嫌い」とか言われた方が作りやすいです(笑)

—これからの目標は?

 バンクーバーって老舗が少ないと思うんです。あそこ良かったのに無くなってしまって残念ってお店がいくつも有ります。まずGrapes & Sodaを10年、20年続く店にすること。自分たちのスタイルを確立して、 コミュニティの輪を広げる。 お客さん皆が来て良かったな、またすぐ来たいなって思えるような店づくりをしていきたいですね。

 マルガリータコンペで1位をとったこともあるSatoshiさんの作るカクテルは味も見た目もアートでした。ぜひ遊びにいってSatoshiさんの作るカクテルを飲んでみて。くれぐれも「私っぽいの」と注文しないように笑。

[文:Sleepless Kao