世界を駆け巡る太鼓集団・倭 バンクーバー初公演! 代表小川正晃氏インタビュー

 バンクーバーは、カナダで太鼓が発祥した地であり、現在個性豊かな多くの太鼓グループが存在している。筆者はカナダ発の太鼓グループ、語り太鼓の設立メンバーであり、語り太鼓は北米の太鼓アンサンブル、サンホゼ太鼓やサンフランシスコ太鼓道場をモデルとして始まった。しかし、シンプルでありながら圧倒的なリズムを放つ太鼓の芸術は日本の田舎にルーツを持っている。雷のように響く太鼓の音は日本古来の神々や産業社会以前の儀式を想起させ、我々の心に呼びかける何か深いものがある。

 バンクーバー市民にとって日本の太鼓グループといえば鼓童やその前身鬼太鼓座(おんでこざ)がよく知られており、彼らは日本の国境を越えて海外で公演を行った太鼓グループの先駆けである。そのたくましく、全身全霊のパフォーマンスは国内の他の太鼓グループに対し高いスタンダードを設けた。そして、日本文化に対する北米のステレオタイプを一喝した。

 1969年に鬼太鼓座が佐渡で結成されて以来、数え切れないほどの太鼓グループが日本でも結成されている。地元コミュニティーを越えて活躍するグループは限られているが、いくつかのグループは海外に新しい観客や経験を求めて活動の範囲を広げている。

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 和太鼓集団・倭(やまと)はそうした国際的に活躍するグループの一つで、2月6日にバンクーバー公演を控えている。その太鼓とエネルギーで、クイーンエリザベス劇場は揺さぶられること間違いないだろう。和太鼓(または太鼓)は日本語で太鼓を総称し、倭はグループの活動拠点地である奈良県の古い呼び名である。関西地区に位置し、奈良県は都道府県としては日本最多のユネスコ世界遺産が登録されている県でもある。

 「日本古来の歴史が残る奈良県は倭にとって最適の活動拠点ですね」と倭創設者・代表の小川正晃(まさ)氏は『The Bulletin・げっぽう』のインタビューに応じた。「グループは明日香村、日本国の発祥の地で共同生活を行い、オリジナルの音楽制作活動に励んでいます。倭のアイデンティティーとして伝統や他の太鼓グループにとらわれすぎずに活動を行っていくことを大切にしています。」

 小川氏は1993年に太鼓やその他の楽器を使ってパワフルなパフォーマンスを行うことを目的として同様のビジョンを持つ太鼓奏者とともに倭を結成した。もともとはグラフィックデザイナーであり吹きガラス工芸家の小川氏であったが、友人から太鼓を紹介され、それ以来太鼓の世界に没頭していった。

 小川氏はグループの作曲を主に担当している。自身の思っている言葉を音楽を通じて表現することに対して「今まで観客が経験したことのない美しく、パワフルな作品を目的としていることはもちろんですが、一番重要なのは見てくださっている人たちに我々のエネルギーを感じてもらうことです。我々は練習を怠りません。それは、皆さんに倭の音楽を通じてエネルギーを届けたいと思うからです」

 この演奏スタイルの探求のための新メンバー獲得はどのように行っているかと聞いたところ、通常観客からグループ参加についてのアプローチがあることがしばしばと小川氏は言う。「誰でも参加は可能で、頑張ってみることは可能ですがご想像の通り、トレーニングや倭の日常生活は大変ですから、ついていくことは大変ですよ」

 日本では歴史的に男性が中心の太鼓だが、(北米では女性太鼓奏者が男性を上回る)ここ数年、より多くの女性が太鼓奏者として日本でも見られるようになってきた。小川氏によれば、女性メンバーは倭の中でも重要な役割を果たしているとか。「倭の女性メンバーは力強く、グループに莫大なエネルギーを与えています!パワフルでエネルギー溢れる演奏を笑顔で行うことを心がけています。(次のページに続く)

日本ではこのパフォーマンス方式は通例ではありません。倭の女性メンバーはそうした伝統的な太鼓演奏の感覚に新しい見方を提供していると思います」

 グループの太鼓に対するアプローチは倭のモットーを表現している「呼ばれたところで演奏して、世界をもっと幸せに」彼らのツアースケジュールはそれをよく表している。毎年6〜10ヶ月はツアーなのである。演奏を通してそのエネルギーは世界50ヵ国以上、何百万人もの人々に届けられている。

 倭の最新のプロダクション、「爆音-BAKUON」がバンクーバーにやってくる。「命が生まれ、脈々と受け継がれて来た時間。途切れることなく鳴り響いて来た心臓の鼓動。そのパワーが我々の身体にも存在している喜び。それが倭の太鼓のビート一つ一つに表現されています。受け継ぎ歩んで来た時間と、汗も涙も含めて刻まれていく思い出。みなさんと音楽を通じて心で繋がり、共有できたらと思います」

 五感総動員で、2月6日のクイーンエリザベス劇場公演に備えたい。

倭−世界を駆け抜ける太鼓集団コンサート

  • 2016年2月6日(土)
  • クイーンエリザベス劇場
  • チケット: $24 to $100 (プラス手数料)
  • ticketstonight.ca

(文:ジョン・遠藤グリーナウェイ)