10月 会長からのメッセージ

 この『Bulletin/ げっぽう』がお手元に届く頃は、次期の政権および我が国の今後の方針が二、三週間のうちに決定されることになります。 国外に出ていたり、あるいはすべての報道を無視している人の場合を除いて、 総選挙が行われることをご存知と思います。投票日は10月19日だということを知っていて、すでに投票済みもしくは投票する予定の方に拍手を送ります。投票所には友人や家族、近所の方を誘ってお出かけください。

 前回の総選挙では、有権者の僅か61%が投票しました。それには、よく言われる「自分が投票したところで何が変わるのだろう」をはじめ数々の理由があります。でも投票しなかった750万人が実際に投票していたら、格段の差があったと思います。

 私達が選出する人々は、公的医療の存続、購入可能な住宅、高等教育機関へのアクセス度、環境保護、食品の安全性、適切な就職の可能性、コミュニティの住みやすさなど私達の暮らし全体に影響を及ぼす決断を下します。またこうして選出された人々は、女性や先住民、人種差別を受けている人々や性的少数者(LGBT)、身体障害者、知的障害者、貧困者、高齢者、そして社会で一番弱い立場にいる人達が安全で社会に受け入れられる暮らしができるか否かについても検討および判断します。

 私達は、国民として民主主義に参加する義務があります。それは私達の民主主義を守るために闘い、権利と自由のために闘った人達のおかげです。かつて日系人は、今日私達が享受する権利を授かっていない場合が多かったのです。

 日系人には、第二次世界大戦が終戦を迎えた4年後の1949年まで投票権がありませんでした。さらにその時に、日系人はBC州沿岸に戻ることが許されました。連邦政府は1942年に戦時措置法を発動し 、安全保障を名目に2万2000名の日系人を強制的に西海岸から追放しました。この法律によって政府は日系カナダ人の資産 (土地、ビジネス、農場、住宅、自動車、漁船、個人財産など)を没収、彼らを監禁し、さらに日本に送還することができたのです。政府は強制送還と呼びましたが、自国民を外国に強制送還させることはできませんので不適切な表現でした。

 私達は不法な収容の承認とそれに対する補償とを求めて闘い、1988年に補償を勝ち取りました。

 しかし、この様な偉大な前進は忘れ去られたようで、今は逆戻りを阻止するために闘っているように思えます。 このテーマはグレーター・バンクーバー日系市民協会 (GVJCCA)人権委員会が企画した「補償の遺産フォーラム」(Legacy of Redress Forum)で話題になりました。このフォーラムでは日系人コミュニティの人々とかつての補償委員会のメンバーが一緒に強制収容および補償について学び、先住民やイスラム教徒、環境活動家など、懸命な活動の末に勝ち取られた権利と法律が今や侵害されていると感じる人達の見解を聞きました。

 例えば、現保守党政権が自由党議員の支援を受け導入し、法律となったC 51 法案は戦時措置法の名残です。これは監視力を増強せずに強大な権限を政府に持たせる強力な法律です。広範な内容を盛り込んだこのC 51で、政府には経済、環境、社会政策に異議を唱える人達を誰でも監視、逮捕、拘束することが許されるのです。C 51は言論の自由を脅かし、容易に特定のグループを対象にすることができ、そのようなグループを対象にすることに対して非難した場合にも行使されかねないのです。

 このフォーラムでの対話は熱心な話し合いの場となり、私達参加者の間に、自分達が思っていた以上に共通点があり、私達が一丸となって民主主義に参加すればどれほど大きな力になるかを発見しました。素晴らしいスピーカーの方達と参加してくださった方達にお礼申し上げます。

 フォーラムでは、民主主義にどんな形で参加できるかの重要性がわかったことが収穫の一つでした。現保守党政権は、選挙管理委員長の発言を制限するなど選挙法を改訂しました。今後は投票カードを身分証明として利用することができず、選挙区境界が変わりました。詳細は Elections Canadaのウェブサイト(elections.ca)もしくは電話(1-800-463-6868カナダとアメリカでは電話料無料)でお問い合わせください。北米以外にお住いの方は電話で613-993-2975にお問い合わせください。国外にいる場合は郵送で投票でき、 10月13日まではElections Canadaのすべてのオフィスにおいて、また期日前投票所では10月9〜12日まで投票できることをご存知ですか? ぜひ投票し、現在そして私達の将来のために変化をもたらしてください。

 私の会長職の楽しみの一つとして、イベントに参加し日系の高齢者の方達と出会うことです。私はいつもそんな方達の話に魅きつけられ、多くのことを学びます。日系プレース・コミュニティ・アワードのディナーでは、トーマス 生山(ショウヤマ)賞を設立し、生山氏の功労を称えました。生山氏はNDP のトミー・ダグラス党首とともに公的ヘルスケア制度を築くのに貢献しました。

 私はソーシャルメディアに生山氏に関するコメントを載せたところ、約158名の人々から何かを学んだという称賛やコメントをいただきました。生山賞受賞者の原 アーサー氏は生山氏との友情や1960年代の GVJCCAの業績について話しました。私はその後で原氏と話し、もっと話を聞きたいと思っていることを伝えました。原氏はもっと話しを聞かせて下さると言っていましたので、私は同氏の話を今後のプロジェクトであるJCCAの歴史に記録として残したいと思います。

 さらに、テーブルで同席した後藤キヨさんとの会話で漁師の生活について知ることができ嬉しく思いました。

 私達日系人の歴史を学ぶ機会を授けてくださった皆様と、私達の歴史を保存し共有してくだっている皆様のご支援に感謝します。

(文:ロレーン・及川 訳:齋藤雅子)