6月 会長からのメッセージ

 毎年夏に開催されるPNE (Pacific National Exhibition) で、4月の末に「1942年ヘイスティングス公園の標識」( Hastings Park 1942 signs)の除幕式が行われ、200人以上の人びとが参加しました。この標識 は1942年のヘィスティングス公園における日系カナダ人の歴史的体験を記述表示した4つの標識のことです。
 70年以上前のこと、除幕式に参集した人数の40倍の8000人を超える日系人が先のこともわからないまま悲惨な状況のもとに、ここに収容されました。その人たちの大部分はバンクーバー以外のところに在住していた人たちで、ヘイスティングス公園は日系カナダ人の一時的な「中継」 収容所だったのです。当時の強制移動・収容の対象となった日系カナダ人は2万2000人。そのうちのこの8000人も、やがてBC州内陸部の収容所やカナダ各地の労動キャンプに送られましたが、それまでの期間をこのヘイスティングス公園の収容所で過ごしたのです。
 4つの標識は公園に永遠に残り、かつてそこに暮らしていた日系カナダ人の話やイメージを訪れる人に伝えてくれるでしょう。仕切りなく並べられたベッドや、家畜のための仕切りに掛けられたシーツや毛布の俄仕立てのカーテンなど、見覚えのある写真があるかもしれません。
 そこで暮らしたことがある人に尋ねると、プライバシーがなかったことや、食べると気分が悪くなるひどい食事のことを聞かされます。政府は150万食を超える食事を生の素材一食あたり9セントで用意していました。私の母は当時の少女時代の体験のせいか、いまでもシリアルが嫌いです。
冷たいポリッジを食べさせられた。かたくて、塊になっていた… 母はよく近所の小さな店に行きました。私たちにオレンジとドーナツを買ってくれました… それが朝ごはんでした。
—マエ・オイカワ(旧姓:ドイ)
ブリキの皿や鉢に入れられた食べ物はひどかった。不衛生だったのでこの公園にいたみんながひどい下痢に苦しみました …
—トム・タガミ
 また、体験者の話によると、家畜の糞尿の悪臭がひどく、逃れることができなかったとか。だれよりも、幼い子供を持つ女性にとって家畜用の建物で暮らさなくてはならないのは非常につらいことでした。家族は分散させられました。男性と青年たちはPNEのフォーラム(Forum)と呼ばれる建物に、13歳から18歳の男子はローラーランド(Rollerland)に収容されました。
周りに柵があり、子供心に超えてはいけないと分かりました。そのときかなしく感じました。ゴルフをしたりすることのできる人が羨ましかった。その人たちの「自由」が羨ましかったのです…
—カズ・タカハシ
 日系カナダ人強制収容の歴史をすでにご存じの方も、初めて知った方も、ヘイスティングス公園の標識を訪れる機会を作ってください。これらの標識は明るい緑色で、すぐに分かると思います。Forumの建物に一基、Rollerlandに一基、それから家畜用施設に二基(一基は独立して建物の外に、もう一基は建物の外壁に)設置されています。
 この標識を建てるプロジェクトはGVJCCAや日系文化センター・博物館、隣組、パウエル祭協会、バンクーバー日本語学校並びに日系人会館など日系コミュニティー諸団体と資金を提供してくださった個人の方々の協力のもとのに実現されました。近日立ち上げ予定のウェブサイトwww.hastingspark1942.ca で情報を交換しあったり、このプロジェクトの次なる段階へのアイディアを話し合ったりできるのを期待しております。
 当地では、5月は「アジア伝統月間(Asian Heritage Month)」とされ、アジア系カナダ人の功績をたたえ、歴史を分かち合うためのよい機会でした。先月、GVJCCAはGlobal TVやCBC TV、Vancouver Co-op Radioなどのラジオ番組に出演し、“Hastings Park 1942 signs”について語りました。GVJCCAはニュー・ウェストミンスターで行われたAsian Heritage Monthのイベントに参加しました。このイベントでは、東アジア系、南アジア系のカナダ人コミュニティー・メンバーのパネル・ディスカッションやアジア系カナダ人労働者の貢献に関する短編映画の上映や、様々なアジアの料理の試食会などがありました。パネル・ディスカッションで、私たちは、自分たちの歴史や人権のために闘った経験を分かち合う上での個々の団体の活動の大切さ、また、いかに連帯してお互いを支えあいながら人種差別と闘っていくかについて話し合いました。
 私たちが伝えたいことを前もって話し合っていたわけではありませんでしたが、期せずして私たちのメッセージは、悪法が私たちのコミュニティーにどれほど影響を及ぼすかという点で一つにまとまりました。C-51号法案(Bill C-51)の脅威に対して訴えるべく結束しなければならないと話し合いました。Bill C-51はテロリスト対策のための法案と言われていますが、実際には対象を拡大して、不当な身柄拘束を認める不必要な法案です。私は、このことと、第二次大戦中、カナダ政府が国民の恐怖心を利用して行った戦時措置法に基づいて強制収容を強いられた日系カナダ人の体験とがいかに類似しているかを指摘しました。BillC-51は日系カナダ人にとって恐ろしい悪夢の再来なのです。
Bill C-51はすでに連邦下院で第三読会を経て、この今月号のBulletin/月報が発行される頃、審議の最終段階として上院に上程されているでしょう。これは上院議員がこの法案に反対の投票をして厳格な意思を示す機会です。これはまた、市民が声をあげ、国民の権利や自由を奪うことは許せないと上院議員や公選された議員に知らせる機会でもあります。
  夏も近づき、私たちの思いは資金集めの活動に向けられています。その活動で集められた資金は日系カナダ人の歴史を保存し、伝え、また権利と自由を守り続けていくために使われます。6月14日の第三回恒例隣組並びにGVJCCAのゴルフトーナメントで皆様にお会いできるよう願っております。若干余裕がありますので、まだお申込みでない方は、隣組604-687-2172までお電話ください。参加費はお年寄りのサポートや“Making It a Home”基金に寄与されます。特別な賞品も用意されています。主な賞品として、ホールインワンには5,000ドル、ゴルフ参加者全員がアメリカ・ジョージア州のオーガスタ・ナショナルゴルフクラブで行われる「マスターズ・トーナメント」への二人分の旅行券が当たる抽選にエントリーされます。
 また、8月1日、2日にはパウエル祭がやってきます。ワイルドサーモンBBQとスパムムスビを楽しんでください。これらの屋台の売り上げは、The Bulletin/げっぽうやGVJCCAのサポートにつながります。さらに私たちJCCAのコミュニティ・ブースにもお立ち寄りください。このイベントにボランティアとして参加することをご希望の方は、GVJCCAにEメールもしくは電話にてお問い合わせください。

Eメール gvjcca@gmail.com
電話   604-777-5222

[文:ロレーン・オイカワ  訳:成瀬 晶子]