働きing:浅見健司

浅見健司くん

筆者の母校でもあるBCIT(British Columbia Institute of Technologyを2016年の10月に卒業した浅見くんに話を伺いました。

—いつ、どのような経緯でバンクーバーに来ましたか?

 2013年の10月にワーキングホリデーで。とりあえず海外に出て見聞を広めようという軽い気持ちで。当時27歳だったんですけど、何かをやってやるぞ〜とかいう目的意識はありませんでした。

 南(オーストラリア)とか行くと遊んじゃうなって。それは年齢的によろしくないなって。なのでバンクーバーを選択しました。来てみたらほんといい所で、ここに住みたいな、移住できたらいいなと思いました。

 バンクーバーに来る以前は、東京の大手花屋で5年半、副店長をしていました。その経験を活かして来たばかりの頃は花屋で働いていました。The Sutton PlaceとかPan Pacific Hotelなどのホテルに花のデリバリーをしてロビーなどに飾り付けをしていました。

—お花屋さんですか、飾り付け・生花もできるなんてすごいですね。お花屋さんになるのが夢だったのでしょうか?

 いえいえ、実は野球スポーツ推薦で大学に入り、ゆくゆくは社会人野球で就職しようと思っていたのですが、大学の4年次に肩を壊して挫折したんです。十何年野球をやってきたのにダメになったので何をしてしていいかわからないという時に、実家が植木屋なので、実家関係の花屋に就職を決めたんです。バラとカーネーションくらいしかわからなかったんですけどね。笑

—外見がスポーツマンなので「お花屋さん」と聞いてギャップが面白かったのですが、納得です(笑)。

 それがどう転じて飛行機の整備士に?

 バンクーバーで 花屋の開業も考えてはみたのですが、業界の人に話を聞いてもどうも現実味が湧かない。朝早くから夜遅くまでの仕事ですし、花を売るっていうのは季節や景気にものすごく左右されるんです。今日いくら売れるかっていうストレスを考えると日本にいる時と変わらないなと思いキャリアチェンジを考えたんです。また、フラワーデザイナーとして一流になるという情熱がイマイチ湧きませんでした。そして、シフトチェンジするには職業訓練しようと思い、BCITに行きました。

—BCITに行くきっかけは?

 どの職業が移民になるのに有利か、安定した収入を得られるのか等を考えてリストアップしてマッチしたのが航空整備士だったんです。

 カナディアンの友人と話をしていた時に出たアイディアでもあるんですけど、“ライセンスを取れば、この国では航空整備士は足りてないから移民は楽勝だぜ。”って言われて、職人にも憧れと興味があったので決めました。

 日本からバンクーバーに来る時に使っていたエージェントからBCITに航空整備士になるコースがあるというのを紹介され受けたのですが、移民申請の基準にもなっているIELTS English Testを受けていなかったので入学できなかったんです。なので英語や航空力学の基礎を学ぶプライベートカレッジに7ヶ月通った後に再度BCITをアプライして、BCITの入学には簡単な理数、英語のテストを受けて受かりました。

—優秀ですね。日本では理数系の大学だったんですか?

 全然違くて、経済学部です。大学は野球で行ってるんで、学部じゃなくて野球部です(笑)

—笑。BCITのコースは短期で凝縮されているから寝る暇がなかったのでは?苦労とかは?

 そうですね、最初は成績も良くなかったんですが、徐々に勉強の仕方がわかって成績も上がってきました。特に実技が 楽しかったです。コンビニ店でのアルバイトも同時にしてましたので、ただただ毎日が忙しかったですが、純粋に楽しめたことといい充実感を持てたので苦にはならなかったですね。なんだ、俺も勉強すればできんじゃんって。笑 結果的にクラスで成績1番のBest student awardを取ることができました。自分でもびっくりしました。学校からこのAwardに対する補助金も出て、頑張った甲斐がありました。ただ、正直いうとできればTool Box一式欲しかったですね。笑 安いTool Boxだけでも1000~2000ドルとかしますから。

 苦労というか、飛行機のヒストリーについての授業では第2次世界大戦の話になって肩身が狭かったっていうのはあります。笑

 あと友人が言っていたように簡単に就職できるわけでもなかった。笑

—卒業から今に至るまでどのような活動をしていますか?

 今はコンビニ店と新聞配達の二足の草鞋で生計を立てながら 飛行機に関しての情報サイト、AVCANADA等で求人募集を見て最低1日1社はレジメを送ったり、会社訪問をしたりするようにしています。

 飛行機もコンピューターライズされ、自動運転が発達してきているし、飛行機の素材、滑走路なんかも大きく変化しているので整備の仕方も変わってきています。近いうちに 整備の仕方が大きく変わって転換期が訪れると思います。まだ年配の整備士達がいますが、新しい技術を勉強してきた自分にチャンスが来るのを見計らっています。

—整備士の就職が決まったあかつきには?

 航空整備士のライセンスはもちろん、ゆくゆくはプライベートのパイロットライセンスなんかも欲しいなとは思っているんです。

 ライセンス取得には学校を卒業だけではダメで、卒業するとエアクラフト メンテナンス エンジニア見習い、通称AME  apprenticeとして飛行機に携わることができるのですが、2年半の実務経験を経て、国の期間によるテストを受け合格すれば、晴れてAMEライセンス取得になります。ライセンスを取得すると全ての整備の責任を負うという重大な役目を任されますし、給料、待遇が飛躍的に上がるんです。今は、その道の第一歩となる会社を探し、就職活動中です。笑

—頑張ってる姿に誰でもエールを送ってあげたくなるような好青年の健司くんでした。

[写真・文:Sleepless Kao