HAFU ハーフ ー日本は多様化しているー

映画『ハーフ』予告編 Hafu: the mixed-race experience in Japan [Official Trailer] from Hafu Film on Vimeo.

近年、私達の様に海外に居住する日本人が増えているのと同様に、日本に居住する外国人の数も増えてきている。また、日本政府の統計によると、国際結婚の件数は1980年の5,545件から今現在では30,000件以上となる。日本の国際化に伴い、年々生まれてくる新生児の内49人に1人は日本人と外国人に間に生まれた子、ハーフであると言う。

作品は4人と一家族を紹介し、ハーフとしての自らの経験や心の内を語っている。

Sophia Fukunishiはオーストラリア人とのハーフ、シドニーで生まれ育つ。幼い頃に何度か日本の親戚を訪れたが、それ以外に日本との係わり合いはない。27歳になったSophiaは、日本人としてのルーツを探る事を決意し東京にやってくる。日本語を習い始め、他の日本人と同じ様に扱って欲しいと願うが現実は厳しく、日本語があまり話せず日本人らしくない外見から特別扱いされ、1年後オーストラリアに帰国する。自らの決意に反し、出来た日本人の友達は海外経験があり皆英語を話す。また、日本居住の外国人と交流する事が多くなり、楽しく過ごす半面、日本人としては受け入れてもらえない現実に対する失望も隠せない。

David Yanoはガーナ人とのハーフ。ガーナで生まれ、Davidが6歳の時に家族は東京に移動する。しかし環境の変化により両親は離婚。母親はガーナに帰国し、父親は多忙を理由にDavidと彼の兄弟2人を養護施設に入れる。10歳であったDavidはそれから18歳になるまでを施設で過ごした。20代前半、バーテンダーとして働いている時にお客さんからガーナの事を尋ねられ、自分がガーナの事を全く知らない事に気づき、Davidはもう一つの祖国を訪ねる事にする。そこで2か国の生活基準の格差を学び、ガーナの子供達の為に幼稚園と中学校を建てる事を決意し、Enije(enijeproject.com) を設立。幼稚園は既に完成、今現在は中学校を完成させる資金集めの為に、精力的に活動し続けている。Davidは日本語が堪能で日本人として誇りを持って生きているが、外見が日本人離れしている為に日本人社会に受け入れてもらえない事に対する不満を抱えてきた。しかし、自分を一人の人間として扱ってくれる人達とだけ接していけば良いのだと悟ってから、人生が変わったと語る。また、自分を知ってもらう事によってハーフに対する理解が深まり、それが次世代への貢献となる事を願っている。

Edward (Ed) Sumotoはベネズエラ人とのハーフ。神戸で母子家庭に育つが、インターナショナルスクールに通い、日本に住んでいても地元コミュニティーからの疎遠を感じてきた。アメリカの大学を卒業後、日本に戻る事はないと思い海外生活を続けていたが、年老いてきた母親の為に日本に帰国する事になる。唯一父親に通じるベネズエラのパスポートを無くす事への抵抗、そのことから長年に渡り日本帰化を拒んできた心境を語る。活発なハーフのコミュニティーの存在をインターネット上で知り、自らミックスルーツ関西(MRK)を設立。現在Edは、MRKが企画、運営するイベントを通し、日本におけるマルティカルチャリズムに対する理解を深める為、活動を続けている。

Fusae Miyakoは15歳の時に戸籍を見るまで自分が韓国人とのハーフである事を知らなかった。今まで生粋の日本人と信じ生きてきたFusaeにとって、それは人生観自体を変える辛い出来事となる。更に、日本と韓国の関係を学ぶにつれ、自分がハーフである事が友情や恋愛のハードルになる可能性があり、その事に怯えなければならなくなった切ない思いを語る。現在、Fusaeはミックスルーツ関西で、子供達の為のイベント運営を手がけている。未来を抱えるハーフの子供達が自分と同じ様な思いをしないように配慮しながら、自らの葛藤に前向きに接している。

大井一家は、お父さんTetsuyaが日本人でお母さんGabrielaがメキシコ人。アメリカ留学中に出会った二人は、恋愛・結婚し名古屋に住む。9歳の息子Alexと7歳の娘Saraは日本の小学校に通っていたが、Alexは‘英語人’と呼ばれいじめに遭い、体調を崩し始める。気分転換の為にAlexを1年間メキシコに行かせ、その効果を見た両親はAlexをインターナショナルスクールに転校させる。そこでは皆が自分の事をちゃんと名前で呼んでくれると嬉しそうに話すAlex。そして、ハーフの子供を持つ親として、子供の将来の為にどの様な選択をするべきか悩むGabrielaの心境も語られる。

単一民族である日本人にとって、皆が同じである事はとても大切である。それは、「出る杭は打たれる」や「郷に入れば郷に従え」等のことわざにも象徴される。また、島国である事から、他民族や別の文化に触れる機会も少なく、個人よりもグループを大切にする事が美であるとされる国民色も手伝って、自分達と違う人物を日本人として受け入れる事は難しいのである。

作品の両監督は自身がハーフで、2009年にハーフプロジェクト(www.hafujapanese.org)の創立者Marcia Yumi LiseとNatalie Maya Willerとの出会いをきっかけに、この作品を製作。作品によって、ハーフの人達が抱える複雑な問題やアイデンティティーの葛藤をより多くの日本人に知ってもらいたいと願っている。

両監督がハーフプロジェクトの為に製作したショートビデオ(www.youtube.com/user/Hafuproject)の中で、街頭インタビューに応じる若者が‘地球人’という言葉を使用している。海外旅行や留学が気軽にできるようになった近年において、特に若い世代ではハーフだからと特別扱いする傾向は薄くなってきているようである。地球人という表現がポジティブに広がり、日本の未来を形成する為に貢献してくれればよいと思う。

「ハーフ」は、今年のパウエル祭最終日8月3日(日曜)の午後4時よりFirehall Arts Centre (203 East Cordova Street)において上映されます。(90分)作品公式サイトhafufilm.com

[文・天野雀]