働きing:三浦玲

今回はダウンタウンの美容室Salon Espritのオーナー&ディレクタースタイリストの三浦玲(りょう)さんにお話をお伺いしました。

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―そもそも美容師を志したきっかけは?
 母親が美容師なんです。仕事も楽しそうにやっているし、お金も貰えるしいいなって。動機は不純です(笑)

―海外に出ようと思ったのは?
 日本で美容師をしていた時に海外の美容師はどんな仕事をしているか見たくて、ロンドンとニューヨークを旅しました。楽しかったのですが、誰ともコミュニケーションが取れず、英語が喋れたらもっと楽しいだろうなと思い、英語を学びたくて来ました。
 こちらの生活も楽しいですし、日本とは仕事のスタンスが違いますね。

―どのように違っているのですか?
 日本の美容院では、お店を閉めた後に練習、練習、練習でした。それ自体も悪くないのですが、こちらに来て初めて仕事をしながら自分の時間がある生活を経験しました。お客さんとの距離感も日本は神様みたいな接客をしますが、こちらは友達みたいな感覚で話す方が好まれたりします。こういった形もあるんだと思いました。

―こちらに来てからの独立までの道のりを教えて下さい。
 バンクーバーの美容業界を盛り上げていくには個人単位よりもお店単位でやったほうが盛り上がると思ったんです。「三浦玲」という個人でやるよりも、「Salon Esprit」でやった方が盛り上げられるのでは、と言うのは建前で、本当にラッキーなだけなんですよ、僕。
 こちらに来てからAirヘアサロンで働いていました。五年が経って、社長から契約更新の月になるけれどどうする?って聞かれたんです。前から社長には将来的には自分のお店を持ちたいとは伝えてはいたのですが、当時は大雑把なことしか考えていませんでした。その時ちょうど(Airヘアサロンが当時あった)ダウンタウンのロケーションが移るから空くよ、三年リース残っているからここでやらない?と言われ、流れに身を任せてオープンに至りました。
 独立までの道のりは地獄のデスマーチでしたね。例えば、開けるのであれば会社の登記だとかライセンスだとか、時間をかけて全部知った上でオープンだと思うんです。でも僕の場合、じゃあ何月からリース、オッケーという進み方だったのでドタバタでした。
 子供もその時ちょうど生まれて二、三ヶ月だったので、奥さんもフラストレーションMAX、僕もやらないといけない事がいろいろとあったので眠る時間なくてフラストレーションMAXで夫婦関係は最悪でしたね(笑)今は幸せです。

―美容師という職業について今と昔で価値観は変わりましたか?
 オーナーになると全然違いますね。雇う側雇われる側で全く違う。オーナーは、従業員の給料も自分の給料も支払う、かつお店の運営もしていかないといけないのでもう少し見るところが大きくなりますね。マネージャーの経験はありましたが、オーナーとは全く違いますね。オーナーは今でもどきどきですね(笑)

―スタッフとも仲がとても良さそうな様子ですが、その秘訣は?
 みんなイベントが好きなので一緒にいろいろとイベントを行います。常に何かしら仕掛け人がいるんですよ。みんなでクリスマスパーティーをしたり、ハロウィンの時には二ヶ月くらい前から準備をしたり。
 日本ではアシスタント時代からお互いに助け合うのは当たり前のことなのですが、こちらは結構働き方としては個々なんです。自分のお客さんを担当して、別に他のスタイリストが関わる必要はないといった形です。うちのお店では、チームワークは取れるように常日頃からしています。例えば、一言お客様にあいさつであったりとか。一人だったらできないサービスがチームでできるようであればやりましょうと。

―華やかな職業に見えますが、大変なこともありますか?
 華やかなのは、イメージだけで大変な職業だと思います。アーティスティックな職業に見えますが、実は職人寄りかなと思っています。技術の習得はコツコツ学んでいくもので、その技術を出すだけなんですけど。それがモノではなくてお客様相手ですから。それプラス、エンターテイメント性が求められます。サービスとかお話とか。
 その程度のバランス取れていないとだめですね。改めて考えるとすごく大変な仕事ですね。

―コミュニティーイベント等にも精力的に参加されていると伺いました。
 カナダではコミュニティーイベントへの参加や、寄付をしたりということが盛んで、そういった事は素敵だと思いました。日本ではあまり目にしなかったので。いい事は取り入れてやっていきたいと思うんです。
 現在、サロンでヨガを定期的に開催しているのですが、ヨガのお金の一部は寄付に回しています。昨シーズンはカナダの性的虐待を受けた人たちのサポートをするソサエティーに、今年の分は東日本大震災の赤十字に寄付をしました。

―今年の抱負を教えて下さい。
 先ほどお話しした、バンクーバーの美容業界を盛りあげていきたいというのは本当に考えている事で、今年は日系、あるいはローカルも交えた美容業界のコミュニティーを立ち上げられたらと思っています。日本人の美容の技術は世界的に言っても低くないと思う。でも僕らがカナダにいてそのトップレベルの仕事ができているかっていうのはまた違う話なんです。今何人かのオーナーさんとは会っていて、賛同してくれる方、否定的な方いろいろといますが、これから業界単位で組合的なものを立ち上げてみたいと思っています。そしてそれが二、三年後に何かの形になればと。
 また、来年お店の三周年という節目の年を迎えます。最初はコネクションも何もなく、お店の運営で精一杯だったのですが、それも広がってきたので何かできたらと思っています。

Salon Esprit

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