今月のお薦め作品

The Imitation Game
第2次大戦中、ナチ軍に対し連合軍が苦戦する中、ドイツ軍のエニグマコードを解読する為、イギリスの天才数学者Alan Turing率いるスペシャリスト達はBletchley Parkの政府機密機構に雇われる。解読不可能と言われていたその暗号を破る為、Turingは解読コンピューターChristopherを発明。それは連合軍を勝利に導いただけではなく、戦争自体を短くした歴史的な快挙であった。作品は、“人工知能の父”と呼ばれたTuringの偉大な功績を中心に、それに反した生涯の苦悩をフラッシュバックを効果的に利用し描いている。Andrew Hodgesによって執筆された伝記「Alan Turing: The Enigma」を基に製作され、ノルウェー人Morten Tyldumが監督。作品は、トロント国際映画祭でPeople’s Choice AwardのBest Filmを受賞。Turing役Benedict Cumberbatchを筆頭にキャストが好演。Golden GlobesやScreen Actors Guild Awardsで、CumberbatchとTuringの元婚約者Joan Clarke役Keira Knightleyがノミネートされ、特にCumberbatchはアカデミー賞でのノミネートも期待されている。The Park TheatreとScotiabank Theatre Vancouverにて上映中。

Two Days, One Night
(Belgium / France / Italy)
Dardenne兄弟(Rosetta、L’enfant、The Kid with a Bike)の新作。ファクトリーワーカーのSandraは、精神的な過労で休暇を取っていた。経営者は非情にもSandraの解雇を決め、エキストラワークをする代わりに残りの労働者達にボーナスを出すと発表。それを決定する従業員投票が月曜日に行われる。友人や夫に励まされ、Sandraは週末中に各同僚を訪ね、Sandraが居残れるように反対票を投じるよう懇願してまわる。Sandra役Marion Cotillardの起用は大当たり。精神的に傷つきながらも勇気を振り絞って同僚に面するSandraの葛藤を、静かに、且つ、的確に演じている。1月9日よりCineplex系で上映予定。

Rosewater
イラン系カナディアンジャーナリストMaziar Bahariの自伝「Then They Came for Me」を映画化。イギリス在住でNewsweekに勤め、2009年6月、イラン大統領選挙の取材の為イランに滞在中、スパイ容疑で不当に逮捕。その後118日間に渡った投獄中、非情な尋問にあう。Bahariの妻やジャーナリスト仲間がBahariを救う為のキャンペーンを開始。アメリカ国務長官Hillary Clintonもこのケースに関して公に発言し、同年10月20日、海外からのプレッシャーによってBahariの釈放につながった。Bahari役Gael Garcia Bernalが好演。ネガティブな経験だが、Bahariが希望を捨てずに過ごした事に焦点を当て、作品を軽快に描く事に貢献している。

Interstellar
近い将来、環境変化により地球は干ばつし、それによる食糧難で人類は飢餓に陥り絶滅の危機にあると言われていた。主人公CooperはNASAの飛行士だったが、NASA閉鎖後、今はとうもろこし農場を経営。10歳の娘Murphyは、彼女の部屋には幽霊が住みついていて、それが自分に何かを伝えようとしていると信じていた。ある日、Cooperはそれが重力波を使った二進数のメッセージではないかと気づき、Murphyとそれが指している方角へ車を走らせる。そして思いがけずNASAの秘密施設にたどり着き、Brand教授と再会。教授からNASAが機密に行っている人類生存の為の計画を聞かされ、そのプロジェクトのパイロットとして参加して欲しいと促される。子供達を残し、いつ戻ってこられるかもわからないそれへの参加に若干躊躇したものの、生活可能な環境が整っている他の惑星への移住をしなければ人類は滅亡してしまう事を考え、愛する子供達の将来の為に、Cooperはプロジェクトへの参加を承諾する。しかし、幼いMurphyは父親と離れる事が受け入れられず、Murphyと和解できないままCooperは出発する事になる。1997年製作「Contact」でコラボレーションをしたプロデューサーLynda Obstと理論物理学者Kip Thorneが作品のアイデアを思い立ち、当初はSteven Spielbergが監督を務める予定であったが、途中で降板。Spielbergに雇われた脚本家Jonathan Nolanは自身の兄Christopher Nolanを薦める。Nolan監督は自身でも宇宙時間に関するストーリーを考案しており、自身のアイデアとJonathanのアイデアを合わせ、更に、Thorne博士をコンサルタントとし、理論に沿ったより現実的なストーリーに拘り、奥が深い作品に仕上げている。また、恋愛に焦点を当てようとしたSpielbergバージョンに対し、Nolan監督は父娘の愛情関係をストーリーのファンデーションにしており、より感動的である。また詳細に拘ったスペースシャトルや惑星等の映像はとても美しく、オリジナルスコアと音響も効果的に使用されている。Scotiabank Theatre Vancouverや各SilverCity Cinemas等にて上映中。

[文・天野雀]