日本の憲法記念日に寄せて 「憲法9条の会(VSA9)」が 討論会を予定

 当地における憲法9条の会(VSA9)は9年前、2005年にバンクーバーの有志によって設立された。当時、日本国内ではすでに数多くの『9条の会』が設立されていた。

人権委員会の立場
 私たちJCCA人権委員会は、平和の問題、特に憲法に盛り込まれた国際平和主義に関心を寄せている。戦争や内乱は人権侵害の最たるもの、そう考えて当地の「憲法9条の会」と協力してきた。戦争や内乱の危機的状況に直面して、時の施政者や一部の市民は自由や権利を制限したり、一時、停止するのはやむをえないと考えがちであろう。しかし、管理社会の考え方から、一時停止が恒久化しない、という保障はない。また自由や権利を一時的に制限しても、後日、それに対する補償を提供すればいいではないか、という考え方も危険である。

  そして今年の5月3日の憲法記念日がまもなくやってくる。現行憲法が施行されたのは1947年のこと。この年、憲法普及会という団体が憲法の施行に合わせて『新しい憲法 明るい生活』と題する38ページの小冊子を発行した。(2007年の復刻版を参照。)憲法施行の日、1947年5月3日に同団体の会長、芦田均氏が発刊の言葉を寄せている。(なお、芦田均氏は翌年、1948年に内閣総理大臣に選ばれている。)同氏は次のように記している。

 「日本国民がお互いに人格を尊重すること。民主主義を正しく実行すること。平和を愛する精神をもって世界の諸国と交わりをあつくすること。」「新憲法に盛られたこれらのことは、新日本の生きる道であり、また人間として生きがいのある生活を営むための根本精神である。」「新憲法が大胆率直に『われわれはもう戦争をしない』と宣言したことは人類の高い理想を言い表したものであって平和世界の建設こそ日本が再生する唯一の途である。」

個人的な体験
 ここで私の個人的な体験に簡単に触れたい。1945年のアジア太平洋戦争終結の当時、学童集団疎開で東北に滞在。東京に戻った私は小学校高学年の生徒で、まもなく中学校に進学していた。当時、上で触れた小冊子のことは知らなかったが、1947年に文部省が発行した中学校1年用の社会科の教科書『新しい憲法のはなし』の中で三つの考え方に触れられている。すなわち、「民主主義」、「国際平和主義」、[主権在民主義」である。戦争放棄や基本的人権などの考え方に新鮮な思いで触れたことが記憶に残っている。(なお、この教科書は1947年から1952年まで使われていた。復刊本は2004年に東京の出版社「童話屋」から発行されているので、入手可能のはずである。)

 1945年の敗戦まで私は多くの同年輩の子供たちと同様、「軍国少年」だった。そして日本の敗戦によって天地が逆転した思いであった。敗戦後まもなく、小学校での担当教員の指導で、既存の教科書の一部分の削除や墨塗りの経験も記憶に残っている。このようなショックの経験から、私は日本や諸外国の歴史に関心を寄せ、大学時代から歴史や国際関係を専門的に勉強するようになった。

最近の状況
 今や私たちはどのような状況にあるだろうか。戦争放棄を規定する憲法第9条は維持されているが、憲法改定の手続きの見直しや集団的自衛権が論議されている。国際的な観点から見れば戦争放棄を定めた憲法第9条はかって進出、侵略した近隣諸国に対する詫び状を意味していることは内外の識者が指摘している通りだろう。しかし、最近では尖閣諸島の問題などで中国や韓国などとの和解が促進されるどころか、却って緊張が高まっている。首相をはじめ政府要人の靖国神社参拝や、いわゆる従軍慰安婦経験者に対する中途半端な処遇などを通じて近隣諸国との関係が悪化し、ギクシャクしている。

 こうした状況の中で私たちは何ができるだろうか。日本国内の平和憲法擁護の運動、諸外国在住の日系人や一般市民の運動との連帯に関して私たちにできることがあるはずだ。こうした点、具体的には、日本の平和憲法の維持と促進、さらに靖国神社、教育、教科書問題、沖縄の基地問題に関しても私たちの間での話し合いが必要であろう。今回、企画されている討論会が現状の日本国憲法をめぐる問題を改めて考える機会を提供することを期待している。

[文・鹿毛達雄]

『憲法問題をめぐる討論会』
「バンクーバー9条の会」主催
日時:2014年5月3日(土)、憲法記念日、午後3時―5時
場所:Roundhouse Community Centre
(181 Roundhouse Mews, Vancouver、電話:604-713-1800)スカイトレインYaletown Roundhouse 駅、Davie StreetとPacific Blvd.
参加無料、寄付歓迎
話し合いは日本語で行います。
「バンクーバー9条の会」連絡先:info@vsa9.org