バンクーバー日本国総領事館総領事岡田誠司インタビュー

John Endo Greenaway

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 過去数年にわたって日系カナダ人イベントに参加している方は、岡田誠司総領事に出会ったことがあると思います。岡田総領事は地域コミュニティで活躍しており、その寛大で思いやりのある人柄と、餅つきやサックス演奏会などの多くの行事に進んで参加していることで知られています。
 外交官としての経歴は、1979年に明治大学法学部を卒業し、1981年に外務省に入省したときから始まりました。1982年にオタワにある在カナダ日本国大使館に初めて派遣され、それから在バーレーン王国日本国大使館へ。そして1987年に再びオタワに渡ります。こうした海外での任務を終えて日本に戻ると、まず東京の外務省国際機関第一課に勤務、それから日米安全保障条約課へ。1997年には在アメリカ合衆国日本国大使館、2000年には在大韓民国日本国大使館へと、再び海外に派遣されました。2002年から2007年は、東京の外務本省内の様々な部署で働きました。アジア欧州協力室副室長、中国課副課長、日韓経済室長、アフリカ第二課長など。
 2009年に岡田氏は副大使として在ケニア日本国大使館に派遣され、翌年は在アフガニスタン日本国大使館の副大使の地位に就きました。そして2012年に、在バンクーバー日本国総領事館の総領事に任命されました。岡田総領事には奥さんと二人の息子さんがいます。

――バンクーバーに来てしばらく経ちますが、この街の印象を聞かせてください。
 
 街としては、そうですね。バンクーバーは非常に美しく素晴らしい街です。美しい自然に囲まれて、同時に近代的でもある。なので私も妻も、素晴らしい都会の生活を楽しむと同時に、ハイキングやカヤック、スキーなどの様々なアウトドア生活も享受しています。私は多くの国や地域に住んだことがありますが、その中でもバンクーバーはお気に入りの場所です。そして、社会としてのバンクーバーはというと――日本人と日系カナダ人が占める、特に文化の領域での割合の大きさに感銘を受けています。バンクーバーに住む日系カナダ人や日本人は、日本人の強いアイデンティティをよく保っており、伝統的な日本文化を維持し、そして自身の近代的な文化も持ち続けています。とりわけ特徴的なのは、領事館として文化行事を計画する際、―これは私たちの最も重要な役割のひとつなのですが―お琴の演奏や日本舞踊、生け花、茶道、詩吟などの日本の伝統文化を披露する団体や人々が多くいることです。ですので、私たちは日本の文化を紹介するために、地域の人々とともに活動することができるのです。これはとてもユニークなことで、こういった文化行事を地域コミュニティと一緒に行うことのできる場所はそう多くはありません。あと、ビジネス面でのバンクーバーですが、活発な日本の事業が多くありますね。とくにここ最近、日本とBC州の関係は転機を迎えています。日本では天然ガスのようなエネルギー輸入への強い需要がある一方で、BC州は重要な事業課題として天然ガスの輸出に焦点を当てている。それゆえ、日本とBC州の関係は不可欠なものです。天然ガスの需要と供給が一致するこの関係は、今後ますます重要なものになっていくでしょう。

――今回でカナダ勤務は三度目となりますね。第二の故郷のように感じているのでは。

 そうですね!

――日本と似ている部分は何だと思いますか。 また、異なる部分は。

 ご存知の通り、日本とカナダは民主主義、人権、法の支配といった社会の仕組みについて同じ価値観を共有しています。ですから日本人がカナダ社会に順応して移り住むのは難しいことではありません。しかしもちろん、異なる国家ですから、違いもあります。日本は人口過密の社会であり、自然と生活スタイルは忙しくなりがちです。そのためすべての物事を正確に進めなければなりません。たとえば、すべてが時間通りです。しかしここ、カナダはより広い空間があるため、もっとのんびりとした生活環境です。人々もリラックスしやすいように思います。一般的に時間基準が異なると言われており、日本人がそれに馴染むには時間がかかるかもしれません。たとえば、日本では1分は60秒しかありませんが、カナダでは、1分は100秒ある、という具合です。それにしても、郷に入りては郷に従えと言ったもので、その環境に順応する必要があります。

――多くの行事に積極的に参加され、地域コミュニティと直に関わってこられましたね。イベントへの参加は楽しいものですか。

 非常に。ここでの総領事としての私の仕事は、できる限り人々と交流することです。そして先ほども言いましたが、ここには多くの団体があるので、彼らや地域の他の人々と知り合うための素晴らしい機会となっているのです。そうして、皆で一丸となって活動ができるというわけです。

――今年は在バンクーバー日本国総領事館が125周年を迎え、「パラレル・パス」シリーズを含む多くの行事が予定されています。このシリーズはどのようにして生まれたのですか。

 在バンクーバー日本国総領事館は、125年もの歴史を持つカナダで最も古い領事館のひとつです。125年前に領事館ができた理由は、ここに住む日本人がいたからです。なのでこの領事館の125年間の歴史は、ここに住んでいた日本人の歴史でもあると思うのです。それゆえ、日本人コミュニティでの領事館の役割を見直したり、これまで私たちがコミュニティのために何をしてきたか、何ができていなかったかを振り返ったりすることが非常に重要であると考えます。知ることは、コミュニティを支えていく役割の向上のためにとても大切なことです。「温故知新」という言葉があります。故(ふる)きを温(たず)ねて新しきを知る、という意味です。私が古い資料を全て見直しているのは、そういう理由からです。

――最近いくつかの行事で、ヒップ・ホップダンサーと一緒にレディ・ガガの曲を電子サックスで演奏するなどして注目を浴びていますね。ミュージシャンとしての生活も送っているのですか。

 いや~。ミュージシャンではなく、ただ音楽が大好きなだけです。

――本当ですか?音楽の演奏についてもっと聞かせてください。

 音楽は好きですし、演奏して楽しんでいますが、ただの趣味です。音楽は私を元気づけ、生活に活気をもたらしてくれるのです。本当に!

(翻訳・林あゆみ)